「取手のとげぬき地蔵と周辺の昔ばなし」は、取手市立図書館と茨城大学が共同事業で制作した取手地域の昔話集です。
その読み聞かせ動画がYouTubeで公開されています。
取手と周辺地域に伝わる15の話をそれぞれ共通語と土地ことばで楽しむことができます。

公開 2022/05/06(最終更新 2022/05/09)

地元の言葉を後世に残すために
―むがし、取手の寺田っつうどごの軽部さん家(ち)に、体さ突っつ刺ったとげぬぐのがやだらどうめえばさまがいたんだど。
これは本の題にある「とげぬき地蔵」の土地ことば版の始まり部分。
共通語版だと次にようになります。
―むかし、取手の寺田の軽部さんの家に、とげをぬくのがとても上手なおばあさんがいました。
取手市立図書館は「地元の話を地元の言葉で子どもたちに伝えよう」と、茨城大学と共同で、取手と周辺地域に伝わる昔話を語りやすいように再話。
共通語版と土地ことば版を本にまとめました。
昔話は全15話で、うち11話が共通語版と土地ことば版があります。
共通語で内容を理解しながら土地ことばを通して地域に関心を持ってもらおうと、学校での授業に活用しています。
茨城の方言は資料が少なく、音声での資料はほとんどないため、読み聞かせを録音し、CDとして貸し出す予定でいましたがコロナ禍で断念。
2021年4月ごろから動画制作に取りかかり、12月にYouTubeで公開しました。
動画は全15話にそれぞれ共通語と土地ことば版があります。
土地ことば版の動画には注釈が流れ、意味を理解しやすくなっています。
「プロジェクトを立ち上げた当初は動画配信を考えていなかったので、コロナ禍での逆境が新しいアイデアにつながりました」と図書館担当者は話します。
日常の言葉遣いを残したい
土地ことば版での言葉遣いは市内の東部地区のことばを使い、市内の郷土を研究している人からの監修を受けました。
そして図書館職員が通常業務の合間を縫って、2年をかけて編集。
朗読は本の編集にも関わった県内の昔話の研究グループが担当し、共通語版は市内のボランティアグループが担当。
集まっての活動が制限されていた時期もあり、収録には1年ほどかかったといいます。
「日常的に使っていただろうと思えるような話し方を心掛けました。取手の地域言葉で話すのが大変で、何度も録音し直しました」と、同担当者は制作の苦労を話してくれました。
「動画配信にしたことで図書館に本を借りに来なくても読めたり聞いたりでき、世界中どこからでもアクセスできる。市民の方から面白い、楽しいとの意見もありました」と担当者。
耳で聞くことで方言のニュアンスが伝わり、言葉の温もりと面白さを感じます。
また、初めに共通語版を聞いてから聞き比べると、さらに理解が深まるかもしれません。
かつて日常的に使われていた話し言葉に思いをはせ、当時の地域の暮らしを想像するのも楽しいのでは。(取材・執筆/ケロンヌ)
取手図書館
住所/茨城県取手市取手1-12-16
電話番号/0297-74-8361
動画はこちら!
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