戦災と戦後の都市開発により、戦前の歴史を物語る建物が少ない中、千葉市美術館にある「さや堂ホール」は、市にとって貴重な歴史的建造物です。

公開 2022/05/20(最終更新 2022/05/20)

MinK

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会社員との兼業ライターです。旅行会社出身で添乗資格を持っており、旅行の知見を会社員以外で活かせる場はないか?と考えて、ライター活動を始めました。千葉のお出かけスポットや史跡などを取り上げて紹介します。ドラマのロケ地や洞窟めぐりが趣味。https://minksroom.hatenablog.com/

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美術館1階に、美しく格調高い大広間

1995(平成7)年に開館して以来、多くの市民に親しまれてきた千葉市美術館。

1階にあるさや堂ホールは、旧川崎銀行千葉支店として1927(昭和2)年に建設されたもので、戦前の銀行建築で当時多く見られた、ネオ・ルネサンス様式の西洋風の建物です。

第二次世界大戦時、千葉大空襲に遭っても焼失せず残りました。

【千葉市中央区】レトロでクラシカルな美術館/さや堂ホール(旧川崎銀行千葉支店)
昔の銀行建築ならではの、レトロでクラシカルな雰囲気
【千葉市中央区】レトロでクラシカルな美術館/さや堂ホール(旧川崎銀行千葉支店)
建物前面に柱列のある、ネオ・ルネサンス様式のギリシャ風建築

巨大な財閥へと発展した川崎財閥の歴史

旧川崎銀行は、本店は東京、支店は水戸・佐原・佐倉・千葉にありました。

川崎財閥の基になった川崎家は江戸時代に水戸藩の為替御用達をしていた商家でした。

川崎八右衛門が興した川崎銀行は、1936(昭和11)年には第百銀行と銀行名を改め、預金額では住友・第一・安田・三井・三菱に次ぐ資本力になるまで発展しました。

その後、戦時下の銀行合同政策によって、三菱銀行に合併され、川崎財閥は解体されました。

さや堂ホールの名前の由来「鞘堂方式」

戦後、旧川崎銀行千葉支店は市民センターとして使用され、その後同敷地に、中央区役所と美術館を併設する企画が持ち上がりました。

建物の保存を求める市民の声により、古い建物を解体せず覆うようにして新しい建物を建てる「鞘堂(さやどう)方式」という手法が採られました。

旧建物を後方に移し、その間、建物の土台となる地下工事を行い、再び元の位置に戻す大工事です。

歴史的価値を消滅させまいと願う市民の思いと、当時の日本の技術と経済力により、今日まで建物の保存・再生がかないました。

現在、さや堂ホールは、美術館の展示に使われる他、一般の人向けにイベントで貸し出しやドラマなどの撮影にも利用されています。

【千葉市中央区】レトロでクラシカルな美術館/さや堂ホール(旧川崎銀行千葉支店)
千葉市美術館では、房総ゆかりの作品の他、浮世絵から現代アートまで楽しめる

美術館に足を運んだ際には、見学してみては。

千葉市美術館
住所/千葉県千葉市中央区中央3-10-8
開館時間/午前10時~午後6時(金・土は午後8時まで)
休館日/第1月曜日(祝日の場合は翌平日が休館)、年末年始
※さや堂ホールは、展覧会や貸し出しにより開放していない日あり
 (要問い合わせ)
入場料金/無料(※展覧会などの催事は、別途観覧料あり)
問い合わせ/043-221-2311 同館