店頭に並ぶたくさんの銘柄から、どのお米を選んだらいいのでしょう?
お米についてのプロ中のプロ・五ツ星お米マイスターに、銘柄の選び方から米に対する思いまで、聞いてきました。
※こちらの記事はちいき新聞2022年9月23日号の紙面記事を再編集してお届けします
※お米マイスターとは…(一財)日本米穀商連合会が認定するお米の博士号ともいえる資格。お米に関する専門職経験がある人のみ認定試験の受験資格がある。五ツ星マイスターはその中でも最上級の資格
先代の急逝で3代目に。
引き継げなかった米屋のノウハウを2つの資格でカバー
―五ツ星お米マイスターの資格を取得された経緯を聞かせてください
祖父の代に米屋を始めて、自分で3代目になります。高校卒業後に米問屋に就職して、その後に他の仕事に就いているときに、父が急逝。それを機に家業を継ぎました。
父が元気なうちに一緒に働いていたなら直接教わることができたであろう米屋のノウハウを、引き継ぐことが叶わなかったので、日々働きながら学び、それを確認するためにお米マイスターの試験を受けました。
三ツ星マイスターは筆記試験だけですが、五ツ星マイスターの試験は店舗勤務の経験が必要なのと、テイスティングなどの実技試験もあるので、本当の知識が問われる資格です。また取得後も3年ごとに更新があり、常に知識と情報をアップデートしています。
お米マイスター取得者は、ウェブサイトお米マイスター全国ネットワークに載っているので、お近くのお店を探してみては。
―その4年後に、ごはんソムリエの資格も取得されたんですね
お米マイスターが問われるのは主に「米」の知識なのですが、消費者であるお客さまが食べるのは「ご飯」ですよね。
ある日、同じお米を販売したのに、購入したお客さまによって感想が違っていたことがありました。
それで「お米の知識だけじゃなくて、『おいしく炊く』『おいしく食べる』ために必要な知識と情報も持っていなければ、正しいアドバイスができない」と気付き、「ごはんソムリエ」の資格を取得しました。
こちらは(公社)日本炊飯協会が認定する資格で、炊飯の科学や技術、ご飯の栄養、衛生管理などの知識が問われるものです。
資格がすべてではありませんが、「おいしいお米(ご飯)を食べたい」と米屋に足を運んでくださるお客さまの期待に、精一杯応えたいと日々学んでいます。

公開 2022/09/21(最終更新 2022/09/21)

お米の世界も個性重視 毎年新作が登場!
―お米のトレンドについて教えてください
長らく不動の人気を誇ってきたコシヒカリですが、最近、以前に比べてわずかに味が落ちてきています。
コシヒカリは暑さに弱いんです。
コシヒカリが生まれたのは今から半世紀ほど前のこと。当時は今ほど温暖化が進んでいませんでした。
日中が暑くても、夜が涼しければ稲の品質が保てるのですが、最近は夜でも気温が下がらない超熱帯夜も少なくありません。
そこで、最近のお米の品種改良では、暑さに強い「高温耐性」のものが増えてきています。
消費者の傾向で言いますと、昔は軟らかくてもちもちしていて、甘みのしっかりしたものが人気でしたが、今はあっさりさっぱり、甘みが少なめのものも好まれています。
あっさりさっぱりの代表的な品種と言えば、ササニシキ。
コシヒカリのブームに押されて年々生産量が減っていましたが、ここ数年やや復活傾向です。
ササニシキはお寿司屋さんに好まれる品種です。さっぱりとして粘りが少なく、シャリが主張しないのでネタのおいしさが引き立ちます。
その他、チャーハンに向いているのは、白米で食べた時に硬めで粘りが少ないもの。
おかゆには、軟らかめで食感がさらさらしているもの。
おにぎりには、ちょっとしっかり目の粒で程よくもっちりしたものが向いています。
しかしながら、お米の世界も個性重視の時代。
毎年新しい品種が登場していて、当店では、いま約50の銘柄を取り扱っています。
一般の方にとっては聞いたことのない品種も多いと思いますし、それぞれ特徴も異なり、また銘柄のネーミングも凝ったものが増えていて、名前だけではどんな味なのか分かりにくい品種も。
米屋でお米を買うなら、お米マイスターなどの専門家に自分の好みを伝えて、少量ずつ買って試してみるのがお勧めです。好きな量で購入できるのも、量り売りの米屋の強みです。
ちなみに、お米の味の違いを比べる時は塩むすびにするのが一番分かりやすいと思いますので、試してみてください。
目的に応じたお米選びもお手伝いしますので、地元のお米屋さんに相談してみてください。
浅見さんの推し米を教えてください
福井県産「いちほまれ」です。
先ほどコシヒカリの話をしましたが、コシヒカリと聞くと新潟県魚沼産を思い浮かべる人が多いと思いますが、元々は福井で生まれた品種なんです。
そんな福井が「コシヒカリを超えるお米を作ろう!」と、20万種から選び抜いた品種がこの「いちほまれ」。白さ、つや、粘り、甘み、粒感、全てのバランスに優れていて、どんな好みの人にも受ける“万能選手”です。
対面販売で、お客さまに米の特徴をきちんと説明できる五ツ星マイスターがいる米屋では、こうした新しい銘柄が正式に全国販売される1年前に、先行販売を任せられることがあります。
この「いちほまれ」も2017年に先行販売させてもらいましたが、その時点でとても好評でしたので、これはヒットするだろうと確信していました。
今年の新米は10月頭ごろに入荷予定です。
―2022年、特に注目のお米はありますか
今年デビューを迎える秋田県産「サキホコレ」は、注目です。
先ほどの福井の話と少し似ていますが、秋田のお米と言えば「あきたこまち」。
でももうこれも37年前に生まれたブランドで、言い換えればそれ以降、秋田にはヒット作がなかったんですね。
「サキホコレ」は、そんな秋田が「あきたこまちを超えるトップブランドを!」と、食味を追求して生み出した品種です。
キャッチコピーは「うまさ満開サキホコレ」。
新潟の「新之助」、山形の「つや姫」、そして先ほどの福井の「いちほまれ」など、「もっちりしているが粒がしっかりしていて、軟らか過ぎない」お米が人気傾向なので、「サキホコレ」もそこを目指して作られています。
こちらも昨年、先行販売させていただきまして、好評でした。
まさに「日本人で良かった」と思えるような味わい。
10月末の入荷予定が待ち遠しいですね。
―その他にも、個性的なお米があれば教えてください
超高価格帯のブランド米ですが、当店では毎年予約完売するほど人気なのが、岐阜県飛騨地方の「銀の朏(みかづき)」と「龍の瞳」です。
商品名は異なりますが、品種は同じ「いのちの壱」、生産地も同じ。いずれも品評会で日本一を受賞しています。
魚沼コシヒカリばかり食べていたお米マニアの方が、「一度食べたらもう他の米には戻れない」と毎年購入するようになったほど。粒の大きさがコシヒカリの1.5倍と大粒で、もっちりだけど軟らか過ぎず、食べ応えがあります。
当店のホームページでは、取り扱い米の比較の指標の一つとして、「ごはん茶碗1杯分の価格」を表記しています。最もリーズナブルなお米が1杯約32円のところ、「銀の朏」は約72円、「龍の瞳」は約67円。生産量が少ないこともあり、予約必須です。
それと、健康志向で玄米食の人や自分で発芽玄米を作りたい人に試してみてほしいお米があります。
当店では今年から取り扱いを始める、茨城県大子町産の「はいごころ」です。
胚が通常より3倍大きい巨大胚品種で、栄養成分GABA(ギャバ)がたっぷり。
低アミロースのお米なので、もちもち軟らかくて冷めても硬くならないので、普通の玄米より食べやすいと思います。
選ぶこと、炊くことにこだわる 嗜好品としての楽しみ方も
―日本人のお米の消費量が減っていることについて、どう思われますか
お米離れが叫ばれ始めて久しいですが、多忙な現代人にとってパン食の方がラクなのは理解できますし、さまざまな国の食文化が楽しめるようになって選択肢が広がっているのも、決して悪いことではないですよね。
お米(ご飯)を食べていないわけではないと思うんです。コンビニでおにぎりやお弁当を買う機会や、外食でライスを頼むことも少なくないはず。
「自宅でお米を炊いて食べる」ことが減っているのです。ですから、「お米の年間消費量」の減少より、「町のお米屋」の減少の方が顕著です。
ならば。
嗜好品としてとことんこだわって、自分の好みの味を探して楽しむものとして考えてみても、いいのではないでしょうか。
そんな時には、生産者の姿や声を知っている、味の違いや特徴をしっかり説明してくれる、そして少量販売に対応できる町のお米屋さんがきっと頼りになるはずです。
―最後に、おいしい炊き方のコツを教えてください
1)お米は正確に計りましょう。計量カップに山盛り入れたら、菜箸などですり切りにして。
2)研ぐ(洗う)お水は、ミネラルウオーター(軟水)または浄水器(カルキ抜き)がお勧め。そして最初の水は、ささっと洗ってすぐ捨てること。お米は乾燥しているので最初に触れた水を最も吸収します。一番ぬか臭い水がいつまでもお米に触れていたら、それも吸収してしまいます。
3)浸水時間は、夏場30分、冬場1時間を目安に。また、炊飯器によっては「炊飯」時間に浸水時間が含まれているものもあります。説明書をよく読んで確認してください。
4)お米をふっくら炊き上げるには、ガスの強い火力が一番です。電気炊飯器なら釜全体に火力が行き渡るIH炊飯ジャーが、ガス火に最も近い。また、土鍋で直火炊きも、火加減と時間配分を覚えたら意外と簡単です。ぜひ挑戦してみてください。
浅見米店
住所/埼玉県越谷市蒲生南町7-1
電話番号/048-986-3262
HP/http://asami-komeya.main.jp/