量り売りのお店で買い物をしたことがありますか?
持参した容器を使うので、プラスチックや包装紙などのごみが出ず、環境負荷を減らすという点が最大のメリット。
より身近に、より日常生活に寄り添うかたちで私たちが実践できるSDGsへの取り組みのひとつとして注目を集めています。
千葉県船橋市を拠点に量り売り事業「Reeha」を展開する勝又萌さんにお話を伺いました。
公開 2023/02/23(最終更新 2023/12/25)

家庭ごみの約6割が「容器ごみ」という現実
環境省によると、家庭ごみに占める容器包材の割合は60%以上。
これを受けて、できるだけ廃棄物を減らそうとする活動が、日本国内はもちろん世界中で広がっています。
その取り組みのひとつが「量り売り」。
空き瓶やタッパー型保存容器を持参して、必要なだけ食材を購入するのでごみが出ません。

個包装や使い捨て容器の利便性を当然のように享受する昨今、船橋市出身・在住の勝又萌さんが量り売り事業「Reeha(リーハ)」を展開。
千葉県内のカフェやマルシェで出店し、周知が進んでいます。
量り売りで食料品を購入してみた!
船橋市のカフェの一角で出店している勝又さんを訪ねてお話を伺いました。

まずは、お買い物から。
この日のラインナップは、アーモンドやくるみなどのナッツ類、ドライフルーツ、チョコレート、ドライトマト、紅茶、塩など。
すべて、20gから購入できます。
どれにしようかな?
わくわくします!

人気ナンバーワンという黒マルベリー。
森のキャラメルと異名を取るほど甘く、栄養豊富なスーパーフードです。
そばにある小瓶に入っているのは、20gの目安。

さっそく計量スタートです。
まずは、群を抜いて人気という黒マルベリーをチョイス。

持参したジャムの空き瓶に黒マルベリーを入れていきます。
いろいろ購入したかったので、1種類につき20gから30gを目指して。
量りに載せて、例えば「23g」であれば、勝又さんに「黒マルベリー23g」と食材名とグラム数を伝えます。

タッパー型の保存容器に、チョコレートを。
Reehaで扱うチョコレートは、途上国の生産者のサポートを目指すフェアトレード(公正取引)製品。
リッチな口溶けに優しい甘さ、アーモンドスライスやココナッツフレークがアクセントになり、いくつでも食べられそうなおいしさです。
1種類を計量し終えて、同じ容器に別の食材を詰めることも可能。

この日の購入品です!
黒マルベリー、あんず、アップル、クランベリー、いちじく(すべてドライ)、生カシューナッツ、チョコレート2種、合計1,561円。
勝又さんが、専用レジで計算してくれます。
Reehaでは、古代小麦マカロニや多古米、カットわかめ、大豆ミートなどの取り扱いもありますが、日によって品ぞろえが異なるということなので、詳細はインスタグラムを確認してくださいね。
また、仕入れてあっという間に完売したというドライパイナップルや苺は、季節限定商品。
私たちは「お店に行けばいつでも何でも買える」と思いがちですが、農産物である果物や野菜は季節に応じて手に入らないものもある、という事実を再確認しました。
環境問題を、より身近にとらえるきっかけづくり
幼少時から、環境を意識した生活を当たり前に実践する母を見て育ったという勝又さん。
「水を大切に使うとか、再利用できるものは繰り返し使いごみを減らすとか、『こうしなさい』と言われたことは一度もないけれど、自然とそんな姿勢が身につくほど生活になじんでいました」と振り返ります。
東南アジアやオーストラリアを旅する中で、リサイクルの取り組みや簡易包装など、現地の生活に根付く環境配慮に触れ、日本との差を感じたとも話します。
2020年12月には、東京商工会議所が主催するeco検定(環境社会検定試験)に合格。
「環境問題に向き合う中で、現状を知り、人に伝えたり広く発信したりするためには、学びを深め自分の考えを明確にする必要があると感じました。学生時代は勉強が苦手でしたが、今回初めて自分から学びたいと思うことに出合いました」と笑顔を見せる勝又さん。

勝又さんの前職は、児童養護施設の指導員。
保育士を退職した母の麗さんと共に子育て支援事業に着手、多古町にある古民家を再生し、親子が集い交流するサロンの運営にも携わります。
自然エネルギー由来の電気を使い、洗剤は自然成分のもの、畑で育てたへちまをスポンジに加工して用いる暮らし。
「生きる知恵を学んでいます」という農業には無農薬で取り組み、収穫した野菜は量り売りで販売することも。
サロンを訪れる子育て世代にも、より身近に環境について考え、関心を持つきっかけになれば、と抱負を語ってくれました。
Reehaのこれから。解決したい課題と、構想中のアイデア
「一緒に手間と会話を楽しみましょう」と朗らかに笑う勝又さん。
量り売りは、容器を持参する必要があるし、詰めたり量ったり、他の人が買い物をしていたら待つ時間も生まれます。
デジタル化が進み、生活の多くの場面で「時短」や効率を追求する今日の風潮にあえて逆行するかのようなスタイル。
しかし着実に周知は進み、集客は伸びているといいます。
「2022年4月に事業を立ち上げてから、定期的に出店するカフェには常連のお客さまも増えています。手間が楽しいと毎月来てくださったり、おいしい食べ方を教え合ったり、お客さま同士の会話も弾んでいてうれしいですね」

大きな課題のひとつは、容器。
「できれば、瓶やタッパー型保存容器など、洗って繰り返し使えるものを持ってきていただけたら」と勝又さん。
ジッパー付きプラスチックバッグを持参する方も多く、4割近くにのぼるそう。
しかし本来、食品を入れる場合は衛生上「使い捨て」が勧められているジップ式の袋。
「瓶は重い、かさばるなど事情もあると思うので、少しずつ取り入れていってもらえたらなぁと思っています」

カフェの一角やマルシェ、イベントに出店しているReeha。
「特別ではない、日常に溶け込む存在になりたい」と勝又さんは話します。
「今日の夕飯をどうしようかな、とReehaに立ち寄ってもらえる、そんなお店を目指しています」
今後は、より多種多彩に食材をそろえたいと話してくれました。
また、1カ月単位で瓶を貸し出し、例えば雑貨屋さんに委託して量り売りを行うというかたちも構想中とのこと。
繰り返し使える容器を持参し、買いたいものを必要な量だけ購入する。
ごみを出さない、こんな買い物のしかたもあるという選択肢が普及するきっかけになるのではと筆者も感じました。

最後に、勝又さんの屋号Reehaとは、regeneration 再生・environment 環境・human 人間・animal 動物 の頭文字を集めたもの。
この地球上の、人間、動物、環境… すべてにつながる諸問題を再生したいという思いが込められているそうです。
「何かを救ったり、変えたり、大きなことはできないかもしれない。でも、環境問題をこれ以上悪化させないと胸を張って言える人間でありたい。それは、身近にできる買い物というかたちで実践できます。ごみ拾いや清掃活動などのイベントも有効な手段ですが、みんなの日常に根付く『買い物』という行動に、週に一度でも量り売りを取り入れると大きな一歩になると思う」
まっすぐな視線を向ける勝又さん。
ひとりひとりの小さな気付きや行動が、地球環境に優しい大きな流れにつながっていくことを願います。
Reeha
HP/https://www.reeha.net/
インスタグラム/@reeha_store_
※出店情報や販売品目などはインスタグラムにて随時更新中