中学生と高校生が競技形式で議論を行う全国大会「ディベート甲子園」を知っていますか? 千葉大学で行われた決勝戦を取材しました。
公開 2025/10/23(最終更新 2025/10/21)

中高生によるディベートの全国大会
「ディベート」と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか。ディベートは、「ある特定のテーマの是非について、2グループの話し手が、賛成・反対の立場に分かれて第三者を説得する形で議論を行うこと」と定義されています。これは実際の私たちの生活でも裁判などの形で取り入れられています。このディベートを児童・生徒を対象に、競技の形式にして全国規模で行っているのが「ディベート甲子園」です。
選手は自分が賛成側・反対側どちらの立場になるか、試合の直前まで分かりません。一定のルールに従って議論し、審判を説得したチームが勝ちとなります。ディベートは、対戦相手を論破するゲームではありません。議論の準備を通して社会問題について学び、様々な立場からその問題について論理的に考える力がつくといわれます。
中学生のテーマはSNSの利用

第30回大会の中学生のテーマは「日本は中学生以下のSNSの利用を全面的に禁止すべきである。是か非か」です。賛成派としては、長時間のSNS利用による睡眠不足や視力低下などの健康被害や、SNSが原因で中学生がトラブルに巻き込まれることを、未然に防ぐメリットを主張できます。一方、反対派はSNSの持つポジティブな力に注目し、禁止すべきではないと主張できるでしょう。
決勝戦では、賛成派の昭和薬科大学付属中学校がメリットとして児童対象の性犯罪の防止を主張。反対派の創価中学校は、性的マイノリティーである児童の居場所の喪失をデメリットとして挙げ、勝利しました。臨機応変な対応が求められる質疑応答もあり、緊張感が漂います。
高校生のテーマは司法取引の拡大

高校生のテーマは「日本はあらゆる犯罪を司法取引制度の対象とすべきである。是か非か」です。司法取引とは、被疑者が情報提供を行う代わりに、検察官がより軽い罪を求刑すること。現在日本では他人の罪に関わる「捜査協力型」のみが認められており、自らの犯罪に関わる「自己負罪型」は認められていません。
賛成派は、捜査の短期化・効率化といったメリットが考えられます。対して反対派は、「どうせ軽い罪になるなら」とやっていない罪を告白してしまうデメリットなどを主張できます。

決勝戦では、賛成派の東京都立小石川中等教育学校が、メリットとして自白による重要証拠が得られる可能性が高いことを挙げました。これに対して反対派の開成高等学校はデメリットとして冤罪の増加を挙げ、過去に実際に虚偽の自白が採用されてしまった例を用いて説明。賛成派が勝利しました。
難しいトピックについて、テンポよく持論を展開していく様子にレベルの高さを実感しました。
特定非営利活動法人 全国教室ディベート連盟
住所/東京都千代田区神田佐久間町1-8-4 アルテール秋葉原708
ホームページ/https://nade.jp/