みそ・しょうゆ・塩こうじ…料理の味を支える名脇役「発酵食品」。発酵文化の源流が息づく「千葉県香取郡神崎(こうざき)町」でお話を聞きました。

公開 2026/02/04(最終更新 2026/02/02)

編集部 みんみん

編集部 みんみん

編集部所属 編集/ライター、千葉市在住。 コーヒーとハイボールとスポーツ観戦が好きです。 苦手なものは強風。

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水運が育んだ、神崎の発酵文化

茨城県との県境に位置する「神崎町」。

ここは、水運・宿場文化・江戸の食需要、そして歴史的背景が折り重なって形成された、日本文化の縮図。

利根川水運の発達により、神崎は宿場町として栄え、食や酒が自然と発展しました。

肥沃な土地と豊富な水で米作りが盛んであったことから、日本酒醸造に適した環境として最盛期には7軒の酒蔵が存在。

戦時中の集約政策で減り、現在は2軒(鍋店(なべだな)、寺田本家)のみになりましたが、それぞれが確かな伝統を受け継ぎ、高い人気を誇る銘酒を造り続けています。

日本初の発酵テーマ型道の駅「発酵の里こうざき」

そんな神崎町に2015年「道の駅 発酵の里こうざき」と称した、日本で初めて発酵をテーマにした道の駅が誕生しました。

テーマのある道の駅としては先駆的存在です。

ようこそ「醸(かも)し」の世界へ  発酵は私たちのカルチャーだ
発酵市場外観

道の駅の中でも目を引く「発酵市場」。

「地域品だけを並べる」という一般的な道の駅の形ではなく、「発酵」という概念で全国を束ねる売り場を展開しているのが大きな特徴です。

神崎町は人口・産業規模が小さく、地元産品だけでは売り場が埋まらないという事情もあり、これを逆手に取って「全国の発酵文化を見せるミュージアム(売り場)」としての個性的な売り場展開に舵を切りました。

他の発酵推進自治体とも連携し、それぞれの挑戦を紹介する場にもなっているそうです。

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店内の様子
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全国の発酵食品がいっぱい!
ようこそ「醸(かも)し」の世界へ  発酵は私たちのカルチャーだ
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神崎の酒蔵の銘酒もずらり

発酵の力を日常に届けるレストランも

そしてお楽しみは「発酵グルメ」。

発酵食品は肉や海鮮などの主役素材ではないため、各メニューの旨味や香りを底上げする役割として静かに活躍しています。

「発酵を五感で感じる料理」というより、「発酵が味の裏側を支える料理」と表現するのが適当でしょう。

「発酵の里こうざき」にあるレストラン オリゼでは、みそ・米などの基本素材は地元産を使用。

メイン食材の味を引き立てるプロデュースとして塩こうじなどを活用したメニューを展開しています。

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鯖の塩糀発酵セット

「鯖(さば)の塩糀(こうじ)発酵セット」は、鯖のうまみが凝縮。

塩味がまろやかで、優しい味に。

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トンテキセット

みそと甘酒でじっくり漬け込んだ豚ロース肉のステーキ、「トンテキセット」は驚くほどに柔らかい。

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糀ばあむ

また、発酵市場での人気商品、「甘酒バームクーヘン(糀ばあむ)」はバームクーヘン専門店と共同開発した自信作です。

甘酒を入れることで生地がしっとり、自然な甘みに。

素材の持つパワーで「食べやすい・飲み物がいらない」ほどに口どけが良いのが特徴です。

同じく、「塩糀クッキー」も人気です。

しっとり・ねっちり食感が特徴でリピーター多数! 手づくりで大量生産はできないそうですが、固定ファンの熱量が高いとのこと。

甘酒・こうじは何に入れても相性が良いため、商品開発の幅が無限大だと道の駅の東川さんは話します。

発酵食品は日本の食文化の基礎

発酵食品は派手な主役ではなくても、日本人の毎日の食事に欠かせない食文化の基礎。

それを可視化し、未来につなぐ装置として機能する発酵の里こうざきは、発酵という日本の根幹文化を見せる「発酵カルチャーパーク」としても日々進化をしています。

道の駅 発酵の里こうざき
住所/千葉県香取郡神崎町松崎855
電話番号/ 0478-70-1711

「地方酵夢員(こうむいん)」お里さん 

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澤田聡美さん(お里さん)

「発酵とは、わくわくすること。変化し続けること」。

そう語るのは、神崎町の道の駅立ち上げにも深く関わった、神崎町まちづくり課の澤田聡美さん。

今でこそ発酵の町として知られる神崎ですが、かつては財政難に苦しみ、町の未来が見えない時代があったそうです。

転機となったのは平成21年に行われた「酒蔵まつり」。

合同開催で5,000人来たら大成功といわれていたイベントに、予想をはるかに超える2万人が訪れました。

「これは発酵で町を変えられる」、そう確信したのが出発点でした。

当時、道の駅の構想自体はあったものの、テーマは未定。

酒蔵まつりの成功から、地域に根付く発酵文化や、かつて宿場町として栄えた歴史を踏まえ、「発酵」を核に据える方針が固まります。

その後、澤田さんは(道の駅の担当ではないながらも)立ち上げの中心人物の一人として積極的に動き始めます。

昼は役場で仕事、夜は道の駅へ向かい、商品の陳列や準備に没頭。明け方に帰宅して、また出勤する日々が続きました。

「楽しくて、全く疲れを感じなかった」。

オープン後も1年間は毎週末ボランティアで売り場に立ち、発酵食品の魅力を熱心に伝え続けました。

休日には全国の蔵元を巡り、造り手の想いや背景を知ることがライフワーク。

「発酵食品は説明しなければ価値が伝わらない。誰がどんな想いで造っているかを知ってほしい」と語ります。

発酵への情熱と実践が、地域の新たな価値を生み、道の駅の成功へとつながりました。
今日も澤田さんは、人も町も「発酵」していく未来を想い描きながら、地域の変化に寄り添い続けています。

「発酵の里こうざき酒蔵まつり2026」開催!

神崎町の春の風物詩「酒蔵祭り」は、平成21年3月に町内の酒蔵(鍋店・寺田本家)が初めて合同開催したことから始まりました。

現在では来場者数約7万人を誇り、人口約5,600人の町に全国から人が集まる一大イベントに成長。

新宿からは臨時列車も運行されるなど、朝から多くの来場者でにぎわいます。

当日は、各酒蔵で30種類以上の試飲が楽しめるほか、国道沿いには約230店舗がずらり。

日本酒だけでなく、全国各地から集まった発酵食品の販売や、地元住民による飲食などの出店もあり、「お酒を飲めない人でも楽しめる」のが特徴。

おいしい料理とともに、ほろ酔い気分で町を散策できる、大人の祭りとして親しまれています。

一方で、飲酒を伴うイベントのため、飲み過ぎへの注意も重要なポイント。

「自分の体と相談しながら楽しんでほしい」と主催者側は呼び掛けます。

酒蔵まつりは、今では「酒蔵の祭り」から「町の祭り」へ。

住民の理解と協力を重ねながら育ってきたこの一日が、2026年も神崎町を熱気で包み込みます。

日時/2026年3月15日(日)雨天決行
   午前9時~午後3時30分
会場/鍋店 神崎酒造蔵および寺田本家と周辺の沿道

※最新情報は町のHPで随時確認を
https://www.town.kozaki.chiba.jp/kanko_iju/kanko/sakaguramatsuri.html