医療の在り方を見直す動きが具体的に始まる2026年度。医療ジャーナリストの村上さんが解説します。
※「病院」とは病床20床以上の医療機関を指します。

| 医療ジャーナリスト 村上 和巳さん |
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| 宮城県出身。中央大学理工学部卒。医療専門紙記者を経てフリージャーナリストとして活躍中。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会理事も務める。 |
公開 2026/04/29(最終更新 2026/04/27)
編集部 モティ
編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB
記事一覧へ医療ニーズの変化に対応できる体制
̶2025年、ベビーブームの1947〜49年に生まれた、いわゆる「団塊の世代」全員が75歳以上になりました。これにより、医療や介護の需要増加が見込まれています。
一方で、医師や看護師など医療を支える人材は減少し、国が負担する医療費も増え続けているのが現状。「全てを国で支える」今の医療制度は、近い将来立ち行かなくなるという懸念から、今年4月に、医療法改正と診療報酬改定が施行されました。
医療法改正の柱の一つが、「地域医療構想の見直し」です。今回の改正では、団塊ジュニア世代も高齢者となる2040年までに病院自体を再編する内容が加わりました。

例えば、同じ市内に病院が数軒あるなら、それらを1軒にまとめるイメージ。発症直後の「急性期」を診る病院を減らした分、これからニーズが増えるリハビリや長期療養などの医療サービスが拡充していきます。
さらに、外科手術の多い急性期医療に携わる医師を集約することで、若い医師の技術向上と医療の質を向上させるという意図も。裏を返せば、けがや病気の際に受診できる病院が、今後は限定されるということ。いざという時に困らないよう、地域の医療情報を把握しておくことが肝心です。
デジタル化推進で人手不足を補う
「医療DXの推進」も医療法改正の柱の一つ。電子カルテやオンライン診療の導入によって、現場の効率化を図り、医療従事者不足に対応していくのが狙いです。電子カルテの標準化が進めば、マイナンバーカードを用いて患者の医療情報を一元管理でき、救急時や転居時の医療連携が円滑になります。
電子カルテ自体はおよそ6割の医療機関に導入されていますが、システムが統一されていないことがネック。また、オンライン診療は、導入している医院はまだ少数派。いずれも本格的な普及にはもう少し時間がかかりそうです。
医療費の値上がり今できる備えは?
物価や光熱費が高騰しても、原則医療機関は診療時の価格に転嫁できません。今回の診療報酬の改定では、物価などの高騰分の引き上げが行われます。すぐには「医療費が高くなった」と感じることはないかもしれませんが、今後もじわじわと上昇することが予想されています。
また、高額療養費制度の自己負担限度額の引き上げも8月から2段階で行われます。高額療養費制度とは、1カ月の間に医療機関や薬局の窓口で支払う金額に上限が設けられている制度。この制度のおかげで、仮に医療費が高額になっても、経済的負担が軽減されてきました。
これらの変更に不安を感じる人も多いかもしれません。会社員なら勤務先が加入している健康保険組合の独自サービスを確認するのも備えの一つ。入院や手術の際に給付金があるなど、意外と活用できるものです。もちろん、健康診断や人間ドックの受診で、自身の健康状態を定期的にチェックし、予防に努めることも大切です。
これから大きく変化する医療の現場。暮らしの安心を守るためには、情報収集力など「自分で備える力」がポイントになるでしょう。
かかりつけ医とかかりつけ薬局
物価や予防医療の観点から、日常的に健康相談ができる「かかりつけ医」を持つことが推奨されています。同じ理由から「かかりつけ薬局」を持っておくのもおすすめ。処方箋薬局は地域の医療機関の情報が集まる場所。単に薬を受け取るだけでなく、健康や介護、症状に応じた病院の相談などにも柔軟に対応してくれます。