健康寿命を支える「予防医療」。生活習慣の改善から健診(検診)の重要性まで、健やかな未来を作るための取り組みを教えてもらいました。
教えてくれたのは…

一般財団法人日本予防医学協会
赤津順一さん(左)
理事、附属診療所ウェルビーイング毛利の所長。医学博士。
金子真大さん(右)
同診療所の主任医長。医学博士。
公開 2026/04/29(最終更新 2026/04/28)
食生活を改善!「尿ナトカリ比」
予防医療とは、単に病気を未然に防ぐだけでなく、より健康になろうという広い意味での活動を指し、大きく分けて三つの段階があります(※下部参照)。
予防医療の「三つの段階」
一次予防 病気を未然に防ぐ
生活習慣の改善や予防接種、ストレス管理など、病気の原因を取り除き発病を防ぐ
二次予防 早期発見・早期治療
健康診断や検診、人間ドックなどを受診し、早期発見・治療による重症化の回避を目指す
三次予防 発症後に悪化・再発を防ぐ
リハビリテーションや投薬、合併症の予防など、症状の悪化や生活機能の低下を防ぐ
かつては結核などの感染症対策が主眼でしたが、現在は生活習慣病の対策や、従業員の健康を投資と捉える「健康経営」へと関心が移っています。予防医療の一次予防にあたる「生活習慣病の予防」において、特に重要視するのが日々の食生活です。
高血圧対策として「1日あたりの塩分摂取量を6g未満に抑える」ことは知られていますが、最近ではより実践的な指標として「尿ナトカリ比」が注目されています。これは尿中に排出されるナトリウム(塩分)とカリウム(野菜などに含まれる成分)の比率を測定するもので、個人の食習慣が「塩分過多か、あるいは野菜不足か」を客観的に評価することを可能にします。こうした具体的なデータに基づいた指導が、効果的な生活改善へとつながります。
運動は日々の積み重ねが大事
加齢に伴い低下する基礎代謝を維持するためには、運動が欠かせません。「1日30分の早歩き」を週5〜6回継続するだけで、消費エネルギーは大きく変わります。足腰に不安がある人は、スクワットなどで下半身の大きな筋肉を刺激するのが効果的です。
テレワークなどで活動量が減っている人こそ、朝の散歩や階段の利用といった「日常の隙間での工夫」を意識しましょう。こういった日々の積み重ねが、将来の大病や大きな手術を回避する可能性を高めてくれます。
予防医療への取り組みが健康への一歩
病気を早期に発見する二次予防で特に強調したいのが「大腸がん検診」です。日本は世界トップレベルの内視鏡技術を持ちながら、検診で陽性判定が出た後の精密検査受診率が低く、結果として大腸がんの死亡率が高いという課題を抱えています。
大腸がんは、ポリープの段階で切除すれば発がんを防ぐことができ、早期発見によって体への負担が少ない治療を選択できます。「大丈夫だろう」という自己判断で放置すると、死亡リスクが4倍になるという報告もあるため、再検査の判定は絶対に見逃さないでください。
女性の場合は、20代からの子宮頸(けい)がん検診も非常に重要です。若い世代でも発症リスクがあるため、早期発見のメリットは計り知れません。
加えて、法定検診に含まれにくい「歯科検診」や「眼科検診」も自発的に受ける意識が求められます。歯周病は全身疾患のリスクに直結しますし、40代以降は自覚症状のないまま進行する緑内障のリスクも高まるためです。
予防医療に真摯(しんし)に取り組むことは、将来の身体的・経済的負担を最小限に抑えることにつながります。自治体の健診(検診)制度なども賢く活用し、自分の体と真剣に向き合う日を作ること。それが、健康寿命の延伸への第一歩となります。
食生活改善の新たな指標「尿ナトカリ比」とは?
尿に含まれるナトリウム(塩分)とカリウムの比率を測定するものです。ナトリウムは血圧を上げる要因になりますが、野菜や果物に多く含まれるカリウムには、ナトリウムを体外へ排出させる作用があります。つまり、単に「塩分を控える」という引き算だけでなく、「カリウムを取って塩分を出す」という足し算の考え方を組み合わせることが重要です。尿検査でこの比率をチェックすることで、より具体的な食事指導に役立てることができます。