東京都杉並区に住んでいた30代の頃、近くにあったランチュウ専門店で愛嬌ある姿に一目ぼれ。
熱い思いを四街道の地で実現すべく地下水を引き、15畳ほどの広さの水槽を自宅に造った冨永さん。
現在、卵からかえした、400匹のランチュウと100匹のオランダ獅子頭を飼育しています。

公開 2021/02/12(最終更新 2021/02/15)

育てたい金魚はこれしかない
冨永さんは、警視庁の交通機動隊に所属し、高い運転技術や判断力が必要とされる白バイに乗って活躍していました。
1982(昭和57)年に、サミットのため来日した当時のフランスのミッテラン大統領の車の先導役も務めたといいます。
都内の職場までの通勤時間は片道2時間かかるが、ランチュウの飼育ができる環境を第一条件とし、85年に、四街道に新居を構えました。
「日本で飼われている金魚は約30種類ほどありますが、ランチュウと出会ったあの時の気持ちが変わることはありません。腰を振るような泳ぎ方が、何ともいえずかわいいし、背びれがなく、腹部が膨らみ、頭部は獅子面をかぶったような肉瘤がある体形の特徴にも引かれています。また、尾の形や模様の美しさを競う品評会があるのもランチュウだけです。毎年、川崎で10月下旬に開催され、1人5匹まで出品できます」と語る冨永さん。
毎年入賞していますが、2008年と11年には、当歳魚(今年の魚)の部でチャンピオンに輝いたことも。

57歳の時パーキンソン病を発症

冨永さんは、1977(昭和52)年に柔道七段の有段者となるほど健康状態には全く問題がなく過ごしていました。
しかし、妻のるみさんがある朝、四街道駅まで送った折に、冨永さんの歩く姿を見て異変に気付きました。
12時間に及ぶ手術(脳深部刺激療法)によって日常に復帰しました。
それでも5年ごとにその装置の入れ替えが必要だといいます。
現在は、るみさんに支えられて、ランチュウの飼育に加え、自宅近くの畑で野菜栽培にも取り組んでいます。
「金魚の命は一にも二にも水です。エサの量を適度にし、水が汚れないようにすることが大切です」と話す冨永さんは、近隣の小学校や老人ホームなどにランチュウを寄贈し、定期的に水槽の掃除に訪れています。(取材・執筆/EKO)