消防・防災のリーダーとして、地域の人々の安全と命を守る消防団。近年「地域を守りたい」という思いで入団する、女性の消防団員が増えてきているんです!
千葉県内のみならず全国で多くの女性消防団員が活躍していますが、「女性団員ってどんな活動をするの?」「子育てや仕事と両立することは可能?」「危ない現場に行くこともある?」など、女性消防団員の活動については疑問だらけ。
そこで、ラボママ(※)が四街道市消防団の訓練を体験し、現役で活躍されている女性消防団員のお話をうかがってきました!
※ちいき新聞読者コミュニティー「ちいきラボ」に登録しているママたち
公開 2021/03/10(最終更新 2021/03/12)

小原らいむ
柏生まれ柏育ちのライターです。自分を育ててくれた千葉県の魅力を発信していきたいという思いで日々取材・執筆しています。愛犬の黒柴と楽しめる千葉のスポットも探索中!ブログ「LIMEGREEN(ライムグリーン)」★Instagram★@ohalimegreen
記事一覧へ目次
消防団とは?
消防団は、消防組織法に基づいて市町村や一部事務組合に設置される消防機関です。消防職員のように消防を本業とするのではなく、普段は別の仕事をしている主婦や会社員が非常勤特別職の地方公務員として参加し、地域を守るために活動しています。
災害発生時の消火活動・救助活動・警戒活動を行う他、火災予防広報やいざというときに備えるための訓練活動を行っています。
千葉県内の消防団員全体の人数が減っている一方で、女性消防団員の人数は右肩上がり。
実際に、千葉県内の市町村などにおける女性消防団員数は、平成5年には102人でしたが、令和元年には約6倍の591人まで増加しているのです!
女性消防団員は、地域住民に対する防災の広報活動や、応急手当の指導など、女性ならではのソフトな面を活かし、地元住民に寄り添った活動を行っています。
ラボママが四街道市消防団の訓練を体験!
今回は、近年注目される女性消防団員の活動について詳しく知るために、千葉県内の消防団の中でも女性消防団員が活発に活動している、四街道市消防団の訓練をラボママの海老原葉月さんが体験してきました!
体験者紹介
ラボママの海老原葉月さん。小2・年長の2児のママである海老原さんは、日頃から地域の防災や防犯には関心を寄せているそう。とはいえ、消防団が実際にどんな活動をしているのか、子育て中の自分でも参加することができるのかなど、分からないことだらけだと言います。

今回、訓練体験のサポートをしていただいた四街道市女性消防団は、現在20代~60代の12人のメンバーで活動しています。皆さん活動服がばっちりお似合いでかっこいいですね!
まずは活動服を着用!
訓練体験では、消防団員の活動服を着用! 市町村などにもよりますが、消防団に入ると、制服・靴・帽子・ヘルメット・手袋など、活動に必要なアイテムは多くの場合、無償で貸与してもらえます。
「思ったよりも軽くて動きやすいです。活動服を着るとグンと気持ちが引き締まりますね!」と海老原さん。安全のためにヘルメットを着用し、足元は丈夫な編上靴を履いて、いざ体験へ!
今回体験させていただく訓練は以下の3つです。
1.小型消防ポンプの放水訓練
2.エアージャッキの取り扱い訓練
3.普通救命講習(心肺蘇生法・AEDの使用法・気道異物除去法)
1.小型消防ポンプを体験
まずは、小型消防ポンプの放水訓練を体験!
消防ポンプに触れるのは初めてという海老原さん。「すごく力が必要なイメージがありますが…」とやや不安げな様子です。
実際に放水ノズルを持ってみて、その重さに驚きます。水が出るヘッドの部分だけでも約5kgの重さがあり、勢いよく水が流れると何倍にも重く感じられたそう。
消防団歴10年以上のベテラン団員さんにサポートしていただきながら、なんとか放水を続けられました。
「実際の消火活動がどのように行われているかを自分の手で体験できて、防災への意識がさらに高まりました」と海老原さん。
なお、市町村などにもよりますが、女性消防団員が実際の火災現場に出動して放水することはほとんどありません。新年に実施する消防出初式での放水訓練や、日々の活動の一環としてポンプの操法訓練を行っているため、消防団の活動をよりリアルに感じる目的で今回は体験させていただきました。
放水訓練のあとは、ポンプの取り扱い方や水圧を調整する方法も教えてもらいました。水量の微調整が予想以上に難しかったそうです。
2.エアージャッキを体験
続いては、エアージャッキの体験です。エアージャッキとは、空気の力で障害物を持ち上げる機械のこと。台風や地震などの災害現場で瓦礫を持ち上げることを想定して訓練します。
今回使用するのは、最大で4トンもの重さを持ちあげられるというエアージャッキです。
小型のポンプを使って空気を入れていきます。
海老原さんは「災害現場でどうやって瓦礫を持ち上げているのかなんて想像したこともなかったので、勉強になりました。ポンプは自転車の空気入れよりも軽くて、これなら万が一のときでも年齢や性別関係なく扱えそうだと思いましたね」と話します。
3.普通救命講習の体験
いざというときに、地域の人の命を守ることが消防団の大切な役割です。
最後は、普通救命講習で心肺蘇生法・自動体外式除細動器(AED)の使用法・気道異物除去法を体験! 突然倒れてしまった人への、救急車が来るまでの応急処置方法の流れを学びます。
15年ほど前に上級救命講習を受講したことがあるという海老原さんですが、実践の機会がなく、内容はだいぶ忘れてしまっていたそう。
久しぶりの講習を終え、「いざという時に落ち着いて正しく動けるためには、日頃から訓練しておくことが大切だと改めて実感しました」と海老原さん。
体験した海老原さんの感想
3つの体験を終えた海老原さんに感想をうかがいました。
消防団の訓練を体験するなかで、防災や救命の知識を付け、いざというときに備えておくことはとても大切だと思いました。 私自身も防災には関心があり、地域のため、誰かのために何かをしたいという思いはずっと持っていましたが、具体的にどうしたらいいのか分からなかったんです。
私たちのような若い世代は、隣近所との付き合いも希薄になりがち。消防団を通して地域とつながり、地域に貢献していけるのは、すごくすてきでやりがいのある活動だなと思いました。
地域の安全を守ること=自分の家族を守ることでもあると思うので、家族の安全を守りたいお母さんやお父さんにも消防団のことをもっと知ってほしいです。
四街道市女性消防団員の皆さんにインタビュー
四街道市の女性消防団員を代表して2名の団員の方に、消防団の活動について詳しくインタビューしました。

ーーー入団のきっかけを教えてください。
宮本さん:子育てが一段落し、何か地域に貢献する方法はないかと思っていたときに女性消防団員の募集広告を見つけました。近所にお年寄りが多く、何かあった時にはサポートしてあげたいと思っていたのもあって、救命や防災の知識を身に付けられる消防団は自分にぴったりだなと。
根本さん:私が入団したきっかけは、知人の紹介です。子どもが小学校を卒業して地元の人とのつながりが少なくなったなと感じていて、地域とつながりを持てる場所を探していたんです。
ーーー具体的にどんな活動を、どのくらいの頻度で行っていますか?
宮本さん:新年の消防出初式に始まり、救助活動の訓練や広報活動、火災予防週間の夜警などが、女性消防団員の主な活動です。女性消防団員が災害現場に出動することは、四街道市消防団ではありませんが、台風のときに消防本部での無線連絡や注意喚起のアナウンスといった後方支援を行ったこともありますよ。
消防団自体は、1年を通して常に何らかの行事や訓練を行っていますが、活動に参加する頻度は人それぞれです。
ーーー消防団の活動と育児・家事や仕事との両立はできますか?
宮本さん:もちろんです。参加できるときに参加して、自分ができる範囲でできることをやろうというスタンスが基本なので、子育て中のお母さんでも大丈夫。「毎週何曜日は必ず参加する」といったルールなどもありません。
根本さん:私は、正社員としてフルタイムで働きながら消防団に参加しています。土日や平日の夜など、仕事や家事との兼ね合いで参加できるときだけ参加しています。無理なく私生活と両立できたからこそ、3年間続けてこられたと思っています。
ーーー消防団の活動のやりがいや、入って良かったと思うことはなんですか?
宮本さん:大切な地域を自分で守っていける、と実感できることです。消防団に入ったきっかけも、地域を守りたい・地域に貢献したいという思いがあったからなので、日々の活動を通して大きなやりがいを感じています。災害対応の知識を得られたのも消防団に入ったからこそですね。
根本さん:やはり、一番は地域を守りながら地域とのつながりを持てることです。他の市の女性消防団員との交流もあったりと、消防団に入らなければ出会えなかったたくさんの人と出会えたのが良かったと思っています。
ーーーどんな女性に消防団がおすすめですか?
宮本さん:心身共に健康で、地域のために何かしたいと思っている方にはぴったりな場所です。明るく楽しい団員ばかりなので、前向きに物事に取り組める方にも向いていると思いますよ。
根本さん:私のように子育てが一段落した人ですね。子どもが手を離れたタイミングで、新しいコミュニティーに参加して地域貢献することで、自分を見つめ直す機会にもなると思います。もちろん、自分のペースで参加するというのが大前提なので、小さなお子さんがいても大丈夫です。
ーーー1人で飛び込むのは不安という方も多いと思いますが…。
宮本さん:「地域に貢献したい」という思いを持っていて、入団条件に当てはまる方なら誰でも、私たちは大歓迎です。気さくな団員ばかりなので、誰も知り合いがいなかったとしても、気まずい思いをしたり、輪に入れなかったりということは決してないと思います!
根本さん:皆、和気あいあいと活動していてとても楽しいですよ。興味があれば、ぜひ一度ご連絡ください!
消防団に入るには?
消防団の入団資格は、市町村や一部事務組合ごとに条例で定められていますが、一般的には以下の条件を満たす人なら誰でも入団することができます。
・18歳以上
・その市町村に居住・勤務・通学している
・心身共に健康な人
今回取材にご協力いただいた四街道市を含め、千葉県内には市町村ごとに48消防団が設置されています。うち、女性消防団員がいるのは32消防団(平成31年4月1日現在)です。
千葉県内の女性の消防団員は、増加傾向にあるとはいえ、割合的には消防団員全体の約2%とまだまだ少ないのが現実です。
育児や仕事と無理なく両立している女性消防団員も多くいます。大切な地域のために何かしたいと思ったなら、ぜひ一歩踏み出してみては?
ご興味のある方は、お住まい(または勤務地)の市町村にお問い合せください。
市町村の連絡先は、千葉県庁HPの消防団一覧(https://www.pref.chiba.lg.jp/shoubou/shouboudan.html#itiran)からご確認ください。