駅直結の商業施設千葉ペリエ開業から丸2年がたち、中央改札側のエリアが賑わうJR千葉駅。その反対側、閑静な住宅街が広がるエリアで注目を集めているのが、インド出身のシェフが腕をふるうインドとアジア料理の店、ベンガルタイガーです。
平日のランチタイムでも予約が多く、毎週通う常連客もいるほど大人気のこちら。オープンして3年を迎えたベンガルタイガーのオーナー夫妻であるシェイク・サヒドさんと、小島麻沙子さんにお話を伺いました。
公開 2021/04/29(最終更新 2021/04/30)

井本 茜
大阪出身、現在は千葉在住。関西の女性誌編集部を経て、現在はフリーライターとして雑誌・WEB等で活動。いつも旅先で探すのは、パン、ケーキ、地酒、古道具。https://akaneimoto826.wixsite.com/mysite
記事一覧へ目次
運ばれてきた瞬間に歓声が上がる美しいカレー
まずベンガルタイガーに初めて来た人が驚くのが、この盛り付け! 忙しいランチタイムでも、一皿ずつ花やハーブで彩られたカレーが提供されます。これは「見た目、味、香りと料理全体で人を喜ばせたい」というオーナーシェフ、サヒドさんのこだわり。インパクト大なお皿も、料理の一部として全てサヒドさんがセレクトしています。

もちろん盛り付けだけでなく、カレーも実力派。マレーシアの5つ星ホテルでヘッドシェフを務めた経験もあるサヒドさんのメニューには、故郷インドの味やこれまで修業したマレーシア、シンガポールの要素を加えたカレーが並びます。

一番人気はバターチキンカレーですが、シェフからのおすすめは出身であるインド・西ベンガル地方のマスタードフィッシュカレー。料理名にマスタードとありますが強い辛さではなく、マスタードシードやコリアンダーシードなどさまざまなスパイスが溶け合った複雑な旨みとなっています。カレーの上にのっているのは前日に調味料に漬け込んでグリルしたあこう鯛。外側はサクッと中はジューシーに焼き上げた肉厚な身にカレーの満足度がぐっと高まります。
また、この店のカレーのお供はナンではなく、サヒドさんが修業した南インドで主流のライスか薄焼きパンのパラタ。追加料金でエッグパラタや、ターメリックが入ったマレーシアの網状のパン・ロティジャラなども選べ、同じカレーでも異なるパンで何度でも楽しめます。
サヒドさんのポリシーは小さなお子様からお年寄りまでどの年代でもおいしく食べてもらえる料理を作ること。そのためバターチキンカレーなどの数種は、セット以外のアラカルトであれば辛くないものも用意してくれるので、お子様など辛いものが苦手な方も安心です。

密かに毎回楽しみなのが、席に着くと必ず出てくる“えびせん”と特製マンゴーソース。オニオンシードが入った甘いソースと塩気のあるえびせんは、カレーの匂いで空腹度が増した待ち時間の救世主! このセットは「少しでもお客様を待たせないように」というオーナーご夫妻のおもてなしの心から生まれたそうで、こうしたちょっとした気遣いがあるのもこのお店の居心地がいいところです。
アラカルトでこそ感じて欲しいシェフの実力
カレーだけでもシェフの実力の高さを十分堪能できますが、ベンガルタイガーの真骨頂はアラカルト料理にあります。

アラカルトにはインドでアレンジされた中華料理である“インド中華”のマンチュリアンや4時間煮込んだ蟹のスープなど、サヒドさんが修業した国々の料理を取り入れたオリジナル料理がずらり。特にシェフ特製の骨付きラムタンドーリはマストオーダー! あっさりとした味付けなのに臭みがなく、ジューシーで柔らかいラムは絶品です。
アラカルトは昼夜通してオーダーできますが、おつまみになるメニューが多いので、ぜひ好きなお酒と一緒に夜に楽しんで。土日祝限定のビリヤニのほか、ディナータイム限定でスペシャルシーフードカレーが登場することもあり、こちらもはずせません!
そのほか、シンガポールライスなど含めてメニューはすべてテイクアウトOK。あらかじめ電話で予約しておけば受け取りもスムーズです。過ごしやすい季節の日中は近くの千葉公園で食べるのも良さそう。
皿洗いからスタート! 世界を股にかけるシェフの道へ

サヒドさんはインドの西ベンガル出身。6人兄弟の家計を支えるために10代の頃から親元を離れ、故郷から離れた南インドのレストランに皿洗い係として就職します。
幼い頃からお母さんの料理の手伝いをすることが好きだったサヒドさん。お手伝いでウコンを扱って真っ黄色になった手で学校へ通うこともあったほど。南インドのレストラン時代に、笑顔のお客様から「おいしかった!」とテーブルに呼ばれる先輩シェフを見て、自身もシェフを志すようになります。

その後、南インドからマレーシアに渡り、2000年にランカウイ島のホテルに就職。そこでニュージーランドやオーストラリアから来たシェフの下でも学びました。7年後、自身でもメニューを考え、インド料理部門のヘッドシェフを務めるまでになった頃、同じ系列のホテルで働いていた妻、小島麻沙子さんと出会います。「彼の料理を初めて食べた時、おいしさにびっくりして! そこで胃袋を捕まれました(笑)」と麻沙子さん。
二人でシンガポールへ移住。世界的IT企業のシェフに
二人は意気投合し、後に結婚! インドで入籍した後、麻沙子さんの仕事が決まった関係で今度は二人でシンガポールに行くことになります。
シンガポールで就職活動をしていたサヒドさんが高い競争率を経て勝ち取ったのが、誰もが知っている某IT企業の専属シェフの職。バイキング形式だったため、毎日5種の新メニューを考える必要があり、楽しみながらも常に新作を考案する日々を送っていました。
ちなみに今のベンガルタイガーにはその頃の経験がしっかり生きていて、それを最も実感できるのが週替わりの平日ランチセット。毎週テーマを替えて3~5種の料理が入っているので、訪れるたびに違う味に出合えます。新たな味を求めて毎週訪れる常連さんもいるほど!
念願の自分の店を千葉でオープン。新たな動きにも注目!
企業の専属シェフになって数年後、ついに夢だった自分のお店を持つことを決意したサヒドさんと麻沙子さん。日本の四季や豊富な食材に惹かれ、また麻沙子さんの家族とも近いことから出身である千葉に店をオープンすることになりました。サヒドさんが厨房を切り盛りする一方で、ホールなど料理以外のサポートを麻沙子さんが行っています。
二人が常に目指しているのは「ここに来て良かった」と思ってもらえるお店。「目、鼻、舌で楽しんでもらう」という料理の質の高さを保つことを大切にしています。
修業時代は出勤時間より3時間も前に来て準備していたという真面目な性格のサヒドさん。「やりたいことがたくさんありすぎて、体が二つ欲しいぐらい」と話す彼の次なるステップが、お客様からのリクエストも多いコース料理の実現。まだ試作段階ですが、今のお店の雰囲気を守りつつ、できる方法を探っているところだそう。すでにレベルの高いモダンインディアがここからどう進化するのか、千葉の食材も気になっているそうで今後の活躍から目が離せません!
一流レストラン級の実力ながら、誰でも気軽に入りやすいお店なのは、ご夫婦の親しみやすい人柄だからこそ。世界で多くの人を満足させてきた努力家シェフの料理は、JR千葉駅に降りたらぜひとも味わってほしい一品です。
ベンガルタイガー
住所/千葉県千葉市中央区松波1-14-11
営業時間/11:00~15:00(L.O.14:00)、17:00~21:30(L.O.21:00)
※最新の営業時間は店舗HPやInstagram、Twitterをご確認ください。
定休日/月曜日、第1&3火曜日
駐車場/3台
アクセス/JR「千葉駅」徒歩7分
問い合わせ/ 043-255-4410
HP/http://bengaltiger-restaurant.com/
Instagram/@bengaltigerrestaurant
Twitter/@BengalChiba