四季折々の植物が見られ、鳥や虫などの生き物も集まる、千葉県我孫子市の「船戸の森」。3月に東京から近所に引っ越してきたばかりの私も大好きなスポットなのですが、実はこの森、10数年前には雑草や不法投棄物で荒れ果てていたそうです。森の魅力をルポし、森を整備した市民団体「船戸の森の会」にもお話を伺いました。
公開 2021/06/29(最終更新 2023/12/26)

野中真規子
フリーライター歴20年。取手市出身。2021春に東京から我孫子市に移住し、手賀沼周辺の水辺や豊かな緑、遺跡、史跡、ユニークな個人商店などに囲まれた生活を満喫中。スパイスと魚影、日本語ROCK、RAP、民族的デザイン、音楽、祭り好き。https://makikononaka.com/
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季節の植物に生き物、木々の間に見える手賀沼‥歩くたびに魅力発見!

船戸の森は、我孫子に引っ越す前から、地図を眺めて気になっていた場所です。検索すると「散歩や森林浴に最高」「虫捕りもできる」「整備がしっかりされていて気持ちよく歩ける」などとても好評でした。
運良く森のそばの家が見つかり、入居前から近所に用事があるたび森での散歩も楽しんでいましたが、木々の間に見える手賀沼の水辺、ツタがいい具合に張った切り株、緑や花など素敵な情景がいっぱい! 引っ越してきてからもほぼ毎日散歩をし、季節ごとに変わる植物や生物の様子はもちろん、天気や時間によってもうつろう森の雰囲気を楽しんでいます。

森にはリラックス効果がある、とよくいわれますが、船戸の森を歩くようになって、私もストレスを解消するのが早くなりました。ちょっとしたトラブルが起きたりして心が乱れた時も、森でいい空気を吸っているうちに気分を取り戻し、元気に家に帰れます。
「子どもたちの安全な遊び場に」と、市民の手で荒れ果てた森を再生
とても居心地のいいこの森は、地元の市民団体「船戸の森の会」の方たちが整備されているとのことで、世話役の玉田千代子さんにお話を伺いました。

「船戸の森の会の活動は、12年ほど前にスタートしました。以前から市が『根戸船戸緑地』として階段やベンチなどを設置していたものの、当時は荒れ果てていて、セイタカアワダチソウが2メートルくらいの高さにまで生い茂ったり、ごみや不法投棄された家電などもあったりして、ひどい状態だったんです。子どもはもちろん、大人でも近づくのをちょっと避けるような場所でした。
その頃、近所の小学校の評議員の仲間たちで『今の子の体力が落ちているのは、思い切り遊べる場所がないからではないか。せっかく近所にあるあの緑地を子どもたちの遊び場として整備しよう』ということになり、会が発足したんです」と玉田さん。
最初は7人で、1人1000円ずつ軍資金を出し合って小さな鎌で草を刈るところからスタート。ちなみに玉田さんは評議員ではなかったのですが、近所ということでメンバーになったそうです。

「その後、近所の人を中心に徐々に作業を行う正会員が増えて今は30人ほどに。月に3回作業日を設けていますが、1回に15~16人が集まります。参加のきっかけは、毎日散歩するうちに活動を知った、友達の紹介で、工作に使う竹をもらいたくて声をかけて、などさまざま。メンバーは70〜80代が中心ですが、みなさんとても元気です。

作業は草刈りや剪定、枯れ木の伐採などの手入れのほか、ツツジなどの植物を植えたり、希少な植物を保護したり、シジュウカラの巣箱を設置したり。コロナの影響もあり、現在は開催していませんが、一昨年までは子ども向けにカブトムシ捕りイベントもしていました。今も近隣の小学校の生物観察などの行事がある際は、事前に掃除するなどのサポートも。年に1回総会を開いて、今後の方針などを話し合っています」(玉田さん)。
草刈りでストレス解消。伐採作業で知恵もつくのが作業の醍醐味
船戸の森の会の作業は完全ボランティア。玉田さんがおっしゃるように、みなさんとても元気で、時々おしゃべりしながら楽しく作業している姿が印象的です。

「本当に楽しいですよ。草刈りは一番のストレス解消法だといわれていますよね。土や緑を感じながら、いい汗をかけるし、草刈りをすればするほどきれいになって、見た目で成果がわかるのもうれしい。
会のメンバーにはそれぞれ得意分野があって、お話を聞いていると勉強にもなります。植物や鳥に詳しい人がいて、森で見られるキンランやカタクリ、サルトリイバラなど珍しい種類の植物や、ツミ(小型のタカ)の巣のありかなどを教えてくれました。

枯れた木を伐採するときは、のこぎりとロープを使って安全に倒す方法をみんなで考えて協力して作業しています。作業するごとに知恵がつくので、森を歩く楽しみがどんどん増えます。
他にも木工や字の得意な方が会の立て看板を制作してくれたり、文章の得意な方が広報誌を作ってくれたり、写真の得意な方が鳥や植物の画像を提供してくれたりなど、いろいろな形で協力し合いながら活動しています」(玉田さん)。

作業に必要な道具は、最初のころは市からの援助を受けていましたが、その後は近所の小中学校や幼稚園、店舗などからの寄付でまかなっているそうです。
個人でも賛助会員として寄付することができ、1口1000円から。都合がよいときに作業を手伝える正会員も募集中とのことです。私も入らせていただき、時々ですが、草刈りや、子どもが掘ったとみられる落とし穴を埋める作業などのお手伝いをして、とても充実した時間を過ごしています。会員の方から、季節ごとに楽しめる植物や鳥の説明を聞くこともでき、森での楽しみが倍増しました!
我孫子駅から歩いて行ける森で、パワーをチャージしてみては!
船戸の森を歩いていると、小さな子ども連れの方も多く、会が掲げていた「子どもたちの遊び場に」という目標は達成されたように感じます。私自身もそう感じていますし、他にも船戸の森に惹かれて引っ越してきた人が近所にいるそうです。

「スローな成果ですが、この森が魅力的だと感じてくれる方が増えているのはうれしいですね。今後もみんなで作業を続けて、子どもだけで『森へ行ってくる』という時に、親が安心して『いってらっしゃい』と送り出せるような森にしていけたら、と思います」(玉田さん)。
船戸の森では、ランニングやウォーキング、犬の散歩、虫捕り、バードウォッチング、植物観察なども楽しめます。ただボーッとするだけでも楽しいですよ。

遠出しにくい今日この頃ですが、我孫子近辺にお住まいで、身近な自然に癒されたい方は、ぜひ出かけてみてはいかがでしょうか。
住所/千葉県我孫子市船戸1丁目
駐車場/なし。自転車乗り入れ禁止。
電車の場合:JR我孫子駅より徒歩約15分
ボランティア活動への問い合わせ/090-3548-4925