印西市を拠点に活動してきた女流版画家小林ドンゲさん(95)。
妖艶な女性像を描き、独自の版画の世界を構築した彼女の作品や資料が、佐倉市立美術館に収蔵されました。
収蔵を契機に再評価が期待されます。

公開 2021/08/10(最終更新 2023/02/03)

ソバ
大手新聞社の記者を続け、定年延長も終わったので、地域の話題を取材したいと、地域新聞様にお世話になっています。明るく、楽しく、為になる話題を少しでも分りやすく紹介したいとネタ探しの日々です。子どもの頃から麺類が好きなのでペンネームにしました。
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小林さんは東京生まれで、女子美術大学洋画科を中退後、銅版画を始めました。
鋭い刃を持つビュランという道具で銅板を彫る「エングレービング」の技法で多くの作品を生み出しました。
この技法は独特の美しい線が特徴ですが、銅板を彫る場合に力が必要なため難易度が非常に高く、女性が採用するのは珍しいといいます。

本名は小林富美江。
ドンゲは、3千年に1度咲くという伝説の花の優曇華(うどんげ)にちなんで命名されたといいます。
1986年、印西市に自宅兼アトリエを設け、活動の拠点を移しました。
しかし、近年、病気で倒れ、作品の散逸を心配した青森県や新潟県などの各地の美術館が作品や関係資料の保管に乗り出すことに。
佐倉市立美術館では2019年に小林ドンゲ展を開催しており、作品10点、原版や下絵など資料8点を収蔵しました。
バラの花弁に女性の顔幻想的な作品
佐倉市立美術館収蔵の作品「薔薇・Blue Moon」は1996年の制作で、バラの花弁の中心に上目遣いで、目の大きな女性の顔が描かれ、その下にチョウが舞っています。

他に、首飾りをした横顔の女性の髪に裸婦などが描かれている「エドガー・アラン・ポーよりモレラ」(1970年ごろ制作)。
女性が猫を抱く「女と猫」(1975年制作)などがあります。

いずれも幻想的な雰囲気を醸し出しています。
これらの作品は今年5月から7月にかけて行われた「収蔵作品展―新収蔵作品を中心として」で展示されました。
同美術館の学芸員・黒川公二さんは、小林さんの作品の魅力について、「幻想的な作品で知られ、人間の内面や、女性の情念を表現している」と語ります。
制作年などが不詳の作品もあり、各地の美術館の調査で、より正確な情報が判明することが期待されています。
佐倉市立美術館
電話/043-485-7851