葛飾八幡宮に向かう参道の随神門をくぐり、左側のクロマツやクスノキの間から見える中央公民館。
境内の風景としてすっかりなじんでいる同館は、明治期に新潟で建築された邸宅を移築したものです。

公開 2021/11/17(最終更新 2022/03/09)

ショー
市川・船橋担当。主に市内の歴史、民話、建造物、イベント等の情報発信。個人的には1980年代より、東京・昭和初期の面影を撮影中。1989年銀座ニコンサロンで個展「都市観察―木造3階建てのまわりでは」、2010年オリンパスギャラリーで「トーキョー・人模様」
記事一覧へ市民に長く愛された伝統的和風建築
市川市中央公民館は、新潟県柏崎市大久保の小熊容徳氏(旧国鉄信越地区自動車局長)邸を昭和26(1951)年に解体運搬し、翌年5月5日に市川市公民館として開館しました。
地域の各団体の打ち合わせ、趣味のサークル、文化活動、勉強会などに利用されていて、木造建築の落ち着いた室内空間のファンだという人も多いようです。

小熊家は旧幕時代からの庄屋で、建物は容徳氏の祖父六郎氏(新潟県令)が明治初年に建築したもの。
使用されていた木材は、10年以上乾燥させた立派なものだったと伝えられています。
柏崎海岸の御野立公園の巡幸碑には、明治10(1877)年の明治天皇北陸巡幸の際、大広間にお泊りになられたとの記載も。
その後、山縣有朋(第3・9代内閣総理大臣)、黒田清隆(第2代内閣総理大臣)も同邸宅に宿泊した資料が存在する、由緒ある建物です。
改築、そして2021年秋、惜しまれつつ閉館
老朽化に伴い平成2(1990)年に改築をしましたが、玄関・ロビーは昔のままの姿を残しています。
玄関は以前、車寄せとして使われていました。
ロビーに入ると太い銘木の梁や柱に圧倒されます。
葛飾八幡宮三十三周年式年大祭斎行(2017年)の折、父親が解体・建築に携わったという棟梁が訪れ、「梁や柱、ふすま、石材と高級な部材が使われていた、と親から聞いている」と話したという記録があります。

2021年7月16日付で市川市から、「中央公民館は令和3年11月末をもって閉館」との発表がありました。
現在、玄関・ロビーは移築を含め活用する方向で検討中とのこと。
跡地には、2023年秋に「子育て」「本との触れ合い」「教養を育める場」を兼ね備えた複合施設の開館が予定されています。
取材協力/市川市教育委員会生涯学習部社会教育課、市川市中央公民館
参考資料/市川市広報資料
住所/千葉県市川市八幡4-2-1
問い合わせ/ 047-334-4279 公民館事務室
HP/https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu12/1411000001.html
※利用の際は要事前予約。ホームページや事務所で内容確認後、予約・申し込みを
※新型コロナ感染症予防のためマスクの着用を