お米は粉にすることでパンにもなります。
米粉パンを作り続けて21年のベーカリーシェフに、米粉の魅力について聞きました。
※こちらの記事はちいき新聞2022年9月23日号の紙面記事を再編集してお届けします
お話を聞いたのは…
公開 2022/09/21(最終更新 2022/09/21)

しっとりもちもち 喉越し滑らかな米粉パン

米粉でパンを作るのは、小麦粉よりも難しい点が多いです。
小麦粉と違って「粒」の固さがあるので、米粉が粗いと硬くなりやすく、細か過ぎると焼き上げた時にふにゃりと腰折れのパンになってしまいます。
また、生地をしっかり丁寧に捏ねて、しっとりとしたパンに仕上げておかないと、食べた時に消化不良を起こすことも。
米が胃の中で水分を吸って膨張するんだと思います。粉っぽい仕上がりになっていたら要注意です。

しっかり捏ねるために時間をかけていると、粘り成分で生地がだれてきます。
高速で素早く、加える水も冷水にして生地を冷やしておくのがポイントです。
メリットは、作業時間を短くできること。
グルテンを含まない米粉はダマにならないので、ふるいに掛ける必要がありません。
また小麦粉ですと、生地を熟成させるフロアタイムが1時間ほど必要ですが、米粉はこれも不要。生地を捏ねたら5~10分で成形してすぐ焼けます。

米粉のパンはしっとりもちもち、口どけが良く、喉越し滑らかで、高齢の方にも「食べやすい」と好評です。ただし成分は「ご飯」なので血糖値の上昇にはご注意を。
夏場は傷みやすいので冷蔵庫や冷凍庫で保存して、食べる時に軽く温めて。
いわゆる冷ご飯、冷凍ご飯と同じ要領でおいしく味わえます。
お米を粉にすることで食の可能性を追求
米粉でパンを作るならクロワッサンをお勧めします。中はしっとり、外はパリパリ、焼き上がりの色も香ばしく仕上がります。
シフォンケーキもおいしいですよ。時間がたってもふわふわを保つには、生地の練り合わせ方にコツがあります。
コッペパンも同じく練りが重要で、私は試行錯誤の末、和菓子の羊羹(ようかん)の作り方からヒントを得ました。
また、米粉には油分があるのでお菓子作りに向いています。
カスタードクリームを作る時も米粉がお勧め。
ダマにならないので扱いやすく、さらさらと舌触りがよく滑らかなクリームになり、冷凍・解凍してもおいしさが変わりません。

小麦粉の価格は確かに高騰中ですが、米粉はお米を洗って乾燥させて粉にする工程に手間を要するのと、商売品としての品質を保ってふっくらと焼き上げるためには、やはりグルテンを加える必要があるので、実は原価はまだ小麦より上。
なかなか「小麦の代用品」とまでにはならないと思いますが、お米を粉にすることで食の楽しさと可能性が広がることは確かです。

私は元々、探求心が強い方なんです。
「米粉でパンを作ってみないか」と提案されて、失敗を繰り返しながら少しずつ米粉の扱い方が分かってくるのが面白くて、気付けば米粉パンを作り続けて21年になりますが、他にももっといろいろ作ってみたいと思っています。
次は米粉うどんに挑戦してみようかな、パン屋だけど(笑)。
※編集部注:ブランジェ・アプレの米粉パンは小麦グルテン入りです(グルテンフリーではありません)
ブランジェ・アプレ
住所/埼玉県北葛飾郡松伏町ゆめみ野4-1-17
電話/048-992-0290