人生の最後を納得のいく形で迎えるためには、どうすればよいのでしょうか。その鍵を握るのが「人生会議」です。
※この記事は船橋市立医療センター・船橋市西図書館共催による医療講座「人生の最後に受けたい医療」(講師/同センター緩和ケアセンター長 有賀隆氏)を参考に作成しました。
公開 2026/06/09(最終更新 2026/06/01)
終末期医療と希望のずれが生む葛藤
「良い治療とは、できるだけ長く生きられる治療のこと」と思われがちですが、それが全ての人にとっての最善とは限りません。
患者の状態や人生観、価値観によって、望ましい治療は異なるもの。
生命を長引かせる治療と苦痛を和らげる治療が両立しにくいケースもあり、医療者が「医学的にできること」を積み上げた結果が本人の希望とずれてしまうことも起こり得ます
気管挿管や経管栄養などの処置にはメリット・デメリットを踏まえた上で(下参照)、選択には本人の意思が尊重されることが望ましいでしょう。
例えば、いったん気管挿管を行うと意思表示が難しくなり、途中で本人が「やはり違う」と思っても伝えにくくなることがあります。
結果として本人が望まない医療が続く可能性も否定できません。
家族も「本人は、本当はどうしたかったのか」と悩み、決断の重みを一身に背負ってしまうことになるかもしれません。
こうしたすれ違いを減らすために推奨されているのが、「人生会議」です。

なぜ「人生会議」が必要なのか
人が人生の最後を意識するのは、がんの宣告を受けたときや治療が難しくなってきたとき、慢性疾患が悪化して日常生活が苦しくなったときなどさまざま。
医学的に回復が見込めず、人生の最終段階にあると判断される状況では、体力や意識の問題で自分の意思を十分に伝えられなくなることもあります。
だからこそ、「そのとき」になってからではなく、少し前から備えることが重要です。
そこで提唱されているのが、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)。
前もって医療やケアについて考え、家族や信頼できる人、医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有し続ける取り組みのことです。
厚生労働省はこれに「人生会議」という愛称を付け、2018年から普及啓発を進めています。

人生会議は、一度話し合えば終わりではありません。
病状や暮らしの状況、心の揺れによって、希望や選択は変化するもの。
大切なのは「正解」を決めることではなく、自分が大事にしたいことを言葉にして、周囲と共有し続けることです。
人生の最後をより良く、できれば楽しく生きるために、信頼する家族や友人、医療・ケアチームと対話を重ね、必要に応じて考え直していきたいものです。
厚生労働省:「人生会議」してみませんか https://www.mhlw.go.jp/stf/ne
生命維持のための治療の例
■気管挿管・人工呼吸管理

【メリット】
自分で呼吸ができなくなっても確実な呼吸を助けることができる
【デメリット】
チューブが喉から気管の中に入るため不快感がある。そのため多くの場合、鎮静薬が併用される。長期間使用すると喉や声帯に傷がつく可能性あり
■経管栄養(経鼻、胃ろうなど)

口から食事を取るのが難しい場合に、鼻やおなかのチューブから栄養や水分、薬を補給する方法
【メリット】
必要なエネルギーや栄養を補給でき、体力の維持がしやすくなる
【デメリット】
経鼻栄養では鼻や喉への違和感があることも。チューブの挿入部や体内での感染発生リスクあり。定期的なケアが必要
繰り返し考え、話し合いましょう
■あなたが大切にしていることは何ですか?
■あなたが信頼できる人は誰ですか?
■信頼できる人や医療・ケアチームと話し合いましたか?
■話し合いの結果を大切な人たちに伝えて共有しましたか?