不動産は、認知症などで本人が意思表示できなくなると売却が難しくなることがあります。実際の事例と共に、実家を売却する際の流れや、不動産会社選びのポイントを取材しました。
教えてくれたのは…

| 株式会社YES代表 志村大輔さん |
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| 宅地建物取引士。2011年、野田市で「おうち探しの『家.s』」設立。 |
公開 2026/08/05(最終更新 2026/07/31)
本人の意思確認が何より重要
「まだ早い」「縁起でもない」と、ついつい先延ばしにしてしまいがちな終活。しかし終活とは「亡くなる準備」ではなく、「残された家族が困らないようにするための準備」です。実際、不動産の所有者が判断能力を失った場合、後を託された家族が困ってしまうケースは少なくありません。
私が最近対応したケースで、こんなことがありました。依頼主Aさんの隣の家は空き家になっていました。その空き家の所有者(Bさん)のおいに当たるCさんから「叔母(Bさん)所有の不動産を購入してもらえないか」と直接相談を受けます。
これを受けて弊社へ仲介を依頼。現地でAさん、Cさんのお話を伺ったところ、所有者であるBさんは重度の認知症で、鹿児島県内の施設へ入所していることが判明しました。不動産の売買を行うには司法書士による本人(Bさん)の意思確認が必要であることを説明したところ、Cさんから「叔母は意思表示が難しい状態です」とのこと。結局売却を断念することになりました。
このように、財産の処分においては「本人の意思」が極めて重要になります。本人が元気なうちであれば、遺贈や家族信託などの方法を活用し、家族が困らないように事前に対策することも可能。元気なうちに不動産や遺産をどうするか考え、家族で話し合っておくことが大切となります。
信頼できる不動産会社とは?
では実家を譲り受けて売却することになった場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。不動産を売る方法には、「仲介」「買取」「個人売買」の3種類があります。「仲介」では、複数の不動産会社に査定を依頼し、相場を把握することが大切です。
不動産会社にはそれぞれ得意分野・不得意分野があり、提示される売却額も変わってきます。提示された売り値が相場と大きくずれていると、販売期間が長引く可能性があるため注意しましょう。「買取」は不動産会社が直接買い取る方法で、早く売りたい場合におすすめです。
ただし価格は仲介より低めに設定される傾向があり、仲介での売却価格の7〜8割程度が相場となっています。また「更地渡しか現況渡しか」「測量を実施するか」「契約不適合責任を負うかどうか」など、金額以外の条件もしっかり比較することが重要です。
「個人売買」は、契約書の作成や手続きがすべて自己責任となるため、トラブルを防ぐには慎重な対応が必要です。売却の際、高く売りたいからといって提示価格だけで不動産会社を選ぶのは危険。大切なのは、会社の規模や提示価格ではなく「担当者」です。
レスポンスが早く、良いことも悪いことも正直に伝えてくれ、根拠を示して説明してくれる――こうした担当者は信頼できます。お客さまと同じ目線で考えてくれる担当者なら、安心して大切な不動産を任せることができるでしょう。
終活は決して縁起の悪いものではなく、家族への最後の思いやり。「まだ大丈夫」と思っているうちに、少しずつでも家族と話し合いを。それが将来、大切な家族を困らせないための、何よりの備えになるはずです。
知っていますか?不動産業界の見えない商習慣
囲い込み
不動産屋が自社だけで物件を売買させようとすること。売り手も買い手も自社内なら手数料を両方得られるので、他社に物件情報を流さない場合があります。他社からの内見希望者がいても「売主の都合で案内できません」「契約予定です」と断ることで、売主にとっては販売チャンスを逃すことになります。
高預かり
家を売ろうとしたとき、実際には売れる見込みのない売却価格を提示して媒介契約を結ぶこと。最初に高い査定価格を提示して媒介契約を取得し、その後「問い合わせが少ないので価格を下げましょう」と徐々に価格を下げていきます。高預かりされた物件は売れないだけでなく、何度も値下げしなければならない場合があります。