江戸時代に大きな発展を遂げた成田山新勝寺。
新勝寺境内にある成田山書道美術館では、このたび、江戸期以降多く寄進された名品の数々などを展示します。

公開 2021/05/01(最終更新 2021/05/28)

書だけでなく、工芸、絵画の文化財を展示
成田山書道美術館は、書の美術館でありますが、成田山新勝寺の所蔵品を展示する機会もあります。
今回は工芸の展示が新鮮です。

まず注目したいのは、江戸後期の蒔絵師・原羊遊斎による最晩年75歳の作品で硯箱と蓋物です。
それぞれの蓋裏絵柄を合わせると松竹梅となる吉兆もの。
その下絵は琳派の絵師・酒井抱一が描きます。
歌舞伎の市川家が寄進した可能性も考えられるということで、同家の成田山信仰と縁深さを改めて認識させられます。
ほぼ初公開の七条袈裟は成田山ならでは
今回、一般向けに初めて展示されるのは、成田山新勝寺の歴代の貫首猊下が着用した七条袈裟。
七条とは、成田山の大法会などにおいて出仕する僧侶が着用する最上の袈裟をいいます。

寄進物の他、成田山開基壹千年祭の折、最高行事である大曼荼羅供の奉修に当たり新調した七条も。
意匠を凝らした刺しゅうが施されており、圧巻です。
超絶技巧として昇華される信仰心のカタチはとても芸術的で、見る者を楽しませてくれます。
今回は5領展示されます。

また、大きな作品でひと際目を引くのが、狩野一信による十六羅漢図。
弟子であり息子(養子)の逸見一純による同作の摸写作品も並びます。
共に新勝寺釈迦堂(旧本堂)の張り込み壁画だったものを、掛幅装にしたものです。
師弟による展示の共演も、今回の見どころ。
羅漢図や羅漢像の制作(釈迦堂外壁木彫りの五百羅漢が有名)は、信仰の厚かった狩野一信の画業の中心を成していたということで注目です。
成田山の歴史とともに生まれたこれらを代表とする文化財の数々。
美術に詳しくなくても楽しめる作品が多いです。
「化政文化の華々しさを体感できる展示空間になりました」と学芸員の谷本真里さんは話しています。(取材・執筆/倫)
成田山書道美術館
住所/千葉県成田市成田640(成田山公園内)
会期/~5月16日(日)
開館時間/午前9時~午後4時(最終入館は午後3時30分)
休館日/4月19日(月)・26日(月)、5月6日(木)・10日(月)
入館料/大人 500円、高校・大学生 300円、中学生以下無料
成田山新勝寺の御護摩札提示で2人まで無料
問い合わせ/ 0476-24-0774