口腔(こうくう)内の悪化だけにとどまらず、全身にも影響をおよぼす「歯周病」。放置せず適切な治療を行うこと、そして何より「ならないためのケア」がとっても重要です。
教えてくれたのは…

| さかえ歯科クリニック 院長 山本信一さん |
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| 1990年、松戸市で開業。患者に寄り添い「痛くない」治療を目指す。 |
公開 2026/04/29(最終更新 2026/04/28)
目次
お口のトラブルだけではない
歯周病は単なるお口のトラブルではなく、命に関わる全身疾患と深く関わっていることが、最近の研究ではっきりと分かってきました。歯周病菌、特に「ジンジバリス菌(P.gingivalis)」という非常に悪質な細菌は、歯ぐきの毛細血管から血液に入り込み、全身へと運ばれていきます。
この菌や菌が出す毒素、炎症物質が全身を巡ることで「糖尿病」「心筋梗塞」「脳梗塞」、さらには「アルツハイマー型認知症」の進行を早める原因になるというエビデンス(科学的根拠)が世界中で報告されているのです。
特に糖尿病との相性は最悪で、歯周病が悪化すると血糖値の指標であるHbA1ⅽを極度に悪化させます。逆に言えば、歯周病を適切に治療することで、糖尿病の数値が改善することも分かっています。また、心臓の血管で血栓を作りやすくしたり、脳の酸化を促進させたりと、まさに「万病のもと」と言っても過言ではありません。
放置すると危険な状態に
歯周病が怖いのは「痛みがないまま進行する」点です。出血や腫れ、口臭は、実はかなり進行しているサインです。病状がレベル1から4まである中で、レベル3の末期から4になると、歯を支える骨が溶け、最終的には歯を抜かざるを得なくなります。
レベル4まで進むと、もはや「完治」は難しく、抜歯して周囲への悪影響を食い止めるしかありません。重症化したまま放置すると細菌が全身へ回り、非常に危険な状態になりますので、「歯周病にならないた
めの予防」が重要です。
「プロケア」と「ホームケア」で予防
そのためには、歯科医院での「プロケア」とご自身での「ホームケア」が大切です。プロによるケアは3、4カ月に一度受けることをお勧めします。これは、歯周病の原因となる「バイオフィルム」を取り除き、菌の活動を抑えるためです。
バイオフィルムとは、細菌たちがスクラムを組んで作り上げた「強固なバリアー」のようなもので、歯と歯ぐきの間の「歯周ポケット」という深い隙間の中に潜んでいます。
非常に粘着性が強いので、うがいや歯みがきではビクともしません。このバリアーを取り除くためには、歯科医院で専用の器具を使い、物理的に壊して掃除してもらう必要があります。定期的に行うことで、バイオフィルムの発生を防ぎ、健康的な状態を維持することができます。
ホームケアも欠かせません。歯ブラシだけでは十分に汚れは落ちないため、1日1回は「デンタルフロス」や「歯間ブラシ」を使うといいでしょう。これだけでお口の環境は大きく変わり、バイオフィルムも付きにくくなりますので、二つのケアでしっかり歯周病を予防してください。
それが、健康な体づくりにつながっていくからです。
歯周病治療の今を知る4つのキーワード
1.歯周組織再生療法
歯周病が重症化し歯を支える骨が溶けてしまった場合でも、「歯周組織再生療法」によって骨を再生させる治療も保険診療(条件あり)で行えるようになっています。
2.顕微鏡(マイクロスコープ)
最近では、唾液や汚れを顕微鏡で見て、お口の中にどのような悪玉菌が潜んでいるかを確認する手法が広がっています。特に悪玉菌「ジンジバリス菌」などの有無を特定することで、その人に適した治療計画を立てることが可能になります。
3.レーザー治療
歯科用レーザーは、歯周ポケットの奥深くに潜む細菌をピンポイントで殺菌・破壊するのに非常に有効です。従来の器具では届きにくかった場所も効率よく清掃でき、痛みも少なく、お口の中の環境を改善することができます。
4.抗生剤(歯周内科治療)
うみがひどい場合には、抗生剤を処方することもあります。ただし、バイオフィルムが残ったままだと薬の効果が十分に発揮されないため、まずは歯科医院でバイオフィルムを取り除き、その上で薬を服用しましょう。
もし歯周病で歯を失ってしまったら?
決して放置しないでください。
抜けたままにすると、かみ合わせの相手の歯が伸びてきたり、周囲の歯が動いたりして全体のバランスが崩れ、顎関節を痛めるリスクも高まります。対処法としては「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」という選択肢があります。どの方法が最善かは、お口の状態やご予算、ライフスタイルによって異なりますので、担当の先生と相談してみてください。