千葉県佐倉市・志津駅近くに子どもから大人までを惹きつける不思議な駄菓子屋があると聞き、早速行ってみました。駄菓子屋の名は「鳩♡頭巾(はとずきん)」。駄菓子の種類が豊富なだけでなく、大人も楽しめる工夫とは? 駄菓子をこよなく愛する店主の想いにも感動しました

公開 2021/06/18(最終更新 2023/12/26)

明里

明里

女子大生。レトロな商店街や遊廓史などに興味があり、千葉県を中心に日々各地を探索しています。ブログ「Deepランド」で地域の小さな歴史や建物などを紹介中。https://deepland.blog/

記事一覧へ

「不思議なgarageけむーるぽるん」へ

”高さ180センチの世界で、表現する、実現する、楽しい・可愛い・新しい事、物、人とのつながり、出会いの不思議な空間。”

今回ご紹介する、佐倉市上志津の駄菓子屋「鳩♡頭巾(はとずきん)」は、お店のうたい文句からも分かるように、従来の駄菓子屋のイメージを覆すかのような不思議な駄菓子屋さんなのです。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ

京成本線「志津駅」南口から徒歩3分ほど、住宅街の一角に駄菓子屋「鳩♡頭巾」があります。自宅の駐車用のガレージを改装した店内は、天井の高さ180㎝! まるで子どもの秘密基地ですね。このガレージは「不思議なgarageけむーるぽるん」と名付けられており、その中にあるのが駄菓子屋「鳩♡頭巾」です。店内には子どもの目線に合わせて駄菓子が並べられており、大人でも自然と子どもと同じ目線になってしまいます。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ

「鳩♡頭巾」の店主は小山明子さん。SNSなどで自らを「鳩おばさん」と名乗っており、お会いするまではどんな方なのだろうか?と少しドキドキしていました。実際はとても可愛らしく、絵本の世界から出てきたようなすてきな方でした。

小山さんは普段は別のお仕事をしつつ、その傍らで駄菓子屋を経営しているため、基本的な営業時間は月・土・日の午後です。

休日の午後に訪れた際は、開店時間の15時ちょうどだったにもかかわらず、多くの小学生の姿が。広いガレージが子どもたちで賑わい、地域に愛される駄菓子屋さんであることを実感しました。なぜ、「鳩♡頭巾」はこんなにも人を惹きつけるのでしょうか?

夢だった駄菓子屋を始めるまで

店主の小山さんは元々、駄菓子が好きで子どものころから駄菓子屋へ通っていました。高校卒業後は製菓学校に通い、食品関係の仕事に。そのとき偶然、蔵前に昭和レトロな雑貨を扱う問屋があることを知り、少女系のおもちゃを買っていたそうです。6、7年前に千葉の情報誌で八千代市の駄菓子屋「まぼろし堂」を知り、駄菓子屋の楽しさを改めて認識。「いつかお店をやることがあったら蔵前の問屋の雑貨を使いたいな」と密かに思うようになったといいます。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ

駄菓子屋「鳩♡頭巾」を開店するきっかけは、近くに住んでいる女の子でした。いつも1人で遊んでいたため、「その子が来られるような場所をつくりたい」と思い、今から3年前に自宅のガレージに駄菓子屋をオープン。当初、お店の半分は食べる・遊ぶスペースでした。駄菓子の売上はほとんどなく、子どもたちと遊んでいる時間の方が多かったため、あまり駄菓子屋らしくはなかったそうです。しかし、コロナの影響で休業中に、食べるスペースをなくし、駄菓子のラインナップを増やして現在の形になりました。ちなみに店名は娘さんが命名。「ハートにズキンとする駄菓子屋」と称していますが、実はそれは後付けなのだそうです。子ども心をくすぐるすてきな名前ですね。

駄菓子の可能性を広げたい

休業中は、商品の賞味期限が切れてしまうので、その駄菓子を活用してアレンジレシピを作ることにも挑戦! 現在100種類ほどのすてきなレシピがInstagramで公開されています。

「目標は1000種類! 知名度の低い駄菓子もレシピを通して広めたい。そして野望は本を出版することです」と語る小山さんの目は輝いていました。

駄菓子屋ならではの悩みは多いですが、なかなか共有できないもの。そこで最近、全国の駄菓子屋を経営している方と友達になりたいと思い、LINEのグループを作って日々情報交換しているそうです。

「駄菓子屋ハンター」の土橋真さんとの間では、新たなスタイル(本業の傍ら・定年退職後など)で駄菓子屋を開業した方々のことを「フリースタイル駄菓子屋」と呼んでいます。駄菓子屋文化への敬意が込められた呼び名です。

また、小山さんは志津駅南口商店会の広報として、商店街の活動にも力を入れています。落ち着いたら商店街の軒先でブックマーケットをやりたいと夢を語っていました。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ
椅子・テーブルは元喫茶店のもの

店内の「君のハートをズキュン」とさせる工夫

鳩♡頭巾では、同業の駄菓子屋の方が来ても「こんな商品あったんだ!」と驚いてもらえる商品を置いているそうです。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ
10円の駄菓子だけでもこんなに品揃えが

子どもから言われてうれしかったのは「鳩♡頭巾の駄菓子はおいしい」という言葉。自分で食べておいしいと思ったものを店頭に並べているからです。「売れる商品だけ置いたらつまらない」と、毎週新しい商品を必ず入れています。また、国産商品を中心に応援したいという想いも。駄菓子への愛がお客さんにも伝わっているのですね。

最近の小山さんのマイブームは「味探索」。「味探索」とは、「〇〇味」と味が明記されていない商品が一体何味なのかをメーカーに直接問い合わせること。黄色いのでレモン味だと思っていたら、実はバナナ味だったという事実が発覚したこともあるそうです!

また、コレクターとしての一面もあり、1つ10円で歴史人物のシールが付いているジャック製菓の駄菓子「この人だ~れ?」(全70種)をコンプリートした展示には驚きました。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ

「次は全部で130種類あるシールを集めています。楽しくてしょうがない。」と小山さん。

そして何といっても、鳩♡頭巾の魅力は手作りの袋!

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ

ビニール袋じゃないんです。買った駄菓子は、小山さんのお母さまが包装紙や古紙を再利用して作った袋に入れてくれます。これは八千代台の駄菓子屋「うちゅう堂」さんからヒントを得たもの。お客さんに好評で、私自身もテンションが上がりました。環境にも良くて素晴らしい取り組みだと思います。

奥には昭和レトロな雑貨も販売中です。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ

懐かしい方もいるのではないでしょうか?子どものころから触れることで、昭和レトロ好きを増やしたいと考えているようです。

消えゆく駄菓子に愛を

ご自身でもものづくりをしている小山さんは、駄菓子のパッケージデザインやつくりの細かさにも驚かされるといい、「駄菓子は芸術作品」と語ります。しかし、駄菓子屋を3年やっている間に廃業する問屋や製品があり、今あるものがずっとあるのが当たり前ではなく、どんどんなくなってしまうと痛感したことで、今のうちにみんなに駄菓子を知ってもらって食べてもらいたいと強く思うように。最初に駄菓子屋を始めた経緯とはまた違った思いが芽生えています。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ

コロナ禍で駄菓子屋の問屋も例外なく打撃を受けました。駄菓子屋は問屋と製造メーカーがないとできない仕事です。そのため、小山さんは特に個人メーカーを応援したいと思い、個人的にコンタクトを取って、取引するようになりました。最近では「モロッコヨーグルフェア」を開催。訪れたお客さんにメーカー宛の手紙を書いてもらい、それをメーカーに送るととても喜ばれたそうです。「お金の面だけでなく気持ちの面でも続けていくことは大変なことだから、商品を好きな人、応援している人がいることを知ってほしい」消えていく駄菓子への熱い想いが原動力となって、多くの人を動かす行動力に感銘しました。

「菓子は人なり」フリースタイル駄菓子屋で良さを広めたい

小山さんの座右の銘である「菓子は人なり」。「駄菓子メーカーの方は本当に親切な方が多くて、だからこんなすてきなものを作れるんですね。そう考えると、涙が止まらないです」と熱く語っていました。駄菓子屋の店主さんは優しい人が多いと思っていたけれど、駄菓子を作っているメーカーの方々も温かいのですね。

【佐倉市】駄菓子屋「鳩♡頭巾」。志津駅前の不思議なガレージへ
購入したお菓子

現在は、小学生とそのお母さんが主なお客さん。小山さんは、大学生など他の世代の方々にも足を運んで欲しいと考えています。童心に帰れる不思議なガレージへ出かけてみてはいかがでしょうか?

鳩♡頭巾
住所/千葉県佐倉市上志津(自宅のため非公開)
営業日/月曜日・土曜日・日曜日・祝日
営業時間/15時~17時(月)・14時~17時(土・日)
駐車場/
アクセス/京成本線「京成志津駅」南口より徒歩3分
問い合わせ/090-6165-8894
ブログ/https://ameblo.jp/3biki-kuma/
facebook/https://www.facebook.com/keruporu/
instagram/@hatozukin