幕末から明治に活躍した狩野派絵師、河鍋暁斎(1831〜89)は、浮世絵から風刺画、仏画など多様な作品を残しました。
娘の暁翠(1868〜1935)を主人公にした小説が話題となり、蕨市の美術館を訪れる人が増えています。

公開 2021/10/08(最終更新 2021/10/08)

下絵・画稿類を中心に3000点余所蔵
海外での人気や展覧会の開催を求めるオファーとは対照的に、国内では一時期その名が消えてしまったという暁斎。
「知られていないから最初は誰も何もやってくれなくて。本なども自費出版するしかありませんでした」と話すのは、暁斎のひ孫で、1977年に自宅を改装して美術館を開いた館長の河鍋楠美さん。
蕨市内で眼科を開業しながら、大切に保管されてきた作品を整理し、これまで国内外で46回の展覧会を開いてきました。

美術館では、膨大な所蔵品の中から1、2カ月ごとにテーマを替え、40作品ほどを展示しています。
「小規模でこれだけやっている所はないと思います。開館当時から来ている人でも初めて見るという作品もあって。ありのままの暁斎・暁翠を知ってほしくて活動しています」

明治〜昭和を生きた女流画家・暁翠
作家・澤田瞳子著『星落ちて、なお』(文芸春秋)は、暁斎の娘・河鍋暁翠の一代記。
偉大な父を師に持ち、画業に精進した暁翠の葛藤が描かれ、第165回直木賞を受賞した話題作です。
楠美さんは「小説だから何を書いてもいいですよ」と、澤田さんの執筆を後押ししたといいます。
数え5歳から暁斎の教えを受け始めた暁翠は、1902(明治35)年に現在の女子美術大学で初の女性指導者となり、後進を育成。
「『暁翠先生が一番熱心に教えてくれる』と、皆さん言ってくださった」と楠美さんは振り返ります。
美術館では10月25日(月)まで「暁翠作品展―花鳥風月、そして美人―」を開催中。
暁斎と暁翠が描いた同じ画題の作品や、小説の表紙となった「五節句之内文月」も展示されています。

併設のミュージアムショップには豊富な関連書籍やグッズがそろい、喫茶メニューも楽しめます。(取材・執筆/aki)
住所/埼玉県蕨市南町4-36-4
アクセス/JR京浜東北線「西川口駅」西口から徒歩15分、または同「蕨駅」西口から毎時15分発のコミュニティバスぷらっとわらび(南ルート)「12河鍋暁斎記念美術館前」下車
開館/午前10時~午後4時
料金/一般500円、高校・大学生および65歳以上400円、中・小学生200円(特別展開催時は各100円増)
休館/火・木曜(祝日は開館)、毎月26日~末日、年末年始
電話番号/ 048-441-9780
HP/http://kyosai-museum.jp/