穏やかな笑みをたたえる小枝の仏様「小枝仏(こえだぶつ)」。

手のひらに乗るほどのそれは、円空が諸国を旅しながらその土地の木を使って彫った「円空仏」を手本に作られたSin Enomoto(シン・エノモト) さんの作品です。

「小枝仏」作家 Sin Enomotoさん
「小枝仏の顔に似ている」と言われるというSin Enomotoさん

公開 2021/12/06(最終更新 2021/12/03)

ちいき新聞ライター

ちいき新聞ライター

地域に密着してフリーペーパー「ちいき新聞」紙面の記事を取材・執筆しています。

記事一覧へ

自ら作った「お守りにできる」仏様

円空と円空仏が大好きなエノモトさん。

7年ほど前に、春日部市の小淵山観音院にある円空仏を実際に見て感動し、「手に持てるお守りのような仏様が欲しい」と思ったのが作品作りのきっかけです。

当時まだ東日本大震災の被災に苦しむ人も多かったこともあり、病や飢えに苦しむ人々の心を救った円空仏に倣って、小枝仏を作ることに熱中しました。

「小枝仏」作家 Sin Enomotoさん
元々の小枝の形や模様を生かして作る
「小枝仏」作家 Sin Enomotoさん
螺髪(らほつ)が彫られた小枝仏

自然の贈り物で作る 自然に溶け込む作品

材料は大宮公園のクスノキの落枝。

小枝仏を作りたいと思って園内を歩いていたら偶然落ちてきたのだといいます。

粘り気があり細かい細工もしやすい。また香りが良く、乾燥していてすぐに使えるところも気に入っています。

ノコギリで程よい長さに切ったら、顔は刃の薄いデザインカッターで丁寧に彫り、ニスやアマニ油を塗って表情をはっきりさせます。

作り始めた頃は仏様の全身を彫り上げていましたが、枝の感じを生かしたいと今の形になりました。

そんな落枝で作られた小枝仏の展示会が、2021年10月、春日部市を流れる大落古利根川の川岸にある「風のテラス」で開かれました。

屋外の展示で紛失なども心配だったのでは、と聞くと「子どもが来て『欲しい!』と持って行ったら、しょうがないかな…と。それも含めた展示なので」と穏やかに笑います。

当初は自然の中に埋もれてしまうのでは、と心配しましたが、探すのが楽しいという人もいると聞き、それもいいのかなと思ったそうです。

「小枝仏」作家 Sin Enomotoさん
それぞれの個性が光る
「小枝仏」作家 Sin Enomotoさん
川岸の自然に見事に調和

小枝仏がもたらす人とのつながり

子どもの頃から工作が好きだったというエノモトさん。

今でもいい枝を拾えるとうれしくて、すぐに作り始めてしまうのだとか。

多数制作した小枝仏は小淵山観音院の住職の勧めで、毎年5月に同院で開かれる円空仏祭で販売をしています。

「〇〇さんに似ている」「これは私に似ているみたい」と気に入った作品を手に喜ぶ人たちとのやり取りが何より楽しいとのこと。

「小枝仏」作家 Sin Enomotoさん

小枝仏がつなぐ輪はこれからも広がりそうです。(取材・執筆/まるこ)

Sin Enomotoさんの活動予定などは、フェイスブック⇒https://www.facebook.com/sin.enomoto.9

インスタグラム⇒https://www.instagram.com/koedaya/