何度でも食べたくなる「いつものこの味」。そんな地域で長く愛される定番のお弁当を取材しまし老舗米穀店が守る木更津のソウルフードた。おなかも心もまんぷくに!
公開 2026/04/22(最終更新 2026/04/16)
目次
老舗米穀店が守る木更津のソウルフード!吟米亭浜屋の「バーベキュー弁当」

年間約20万食を販売するロングセラーで、弁当売上の7割以上を占める「浜屋のバーベキュー弁当」。地元・木更津ではソウルフードとして親しまれており、「バー弁」の愛称で世代を超えて愛されています。
(2026年3月19日取材)
秘伝のたれとプロ厳選のお米が約束する味
「浜屋」は元々大正時代に木更津の駅弁店として創業。1962(昭和37)年には名物となる「バーベキュー弁当」(以下、バー弁)を誕生させました。のれん分けで浜屋の伝統を受け継ぐ株式会社泉屋は、江戸時代創業の米穀店。農業生産法人も抱え、地元に所有している約250haの田んぼで米を作り、全国に流通させています。そんなお米のプロフェッショナルが手掛ける弁当店は、老舗の味を守りながら確かなブランドを構築してきました。

名物「バーベキュー弁当」は、浜屋の先代が大の肉好きだったことから生まれたお弁当。「バーベキュー」という名称は、当時としては非常にハイカラなイメージの言葉であったことから名付けられたのだとか。
掛け紙には、タヌキの腹鼓の伝説で有名な木更津の證誠寺(しょうじょうじ)にちなみ、「タヌキ」がバーベキューをしているというユニークなイラストが描かれており、当時から変わらないデザインとなっています。そのビジュアルのインパクトから「『タヌキの肉ですか?』などと言われたこともあってね」と、泉屋の社長・泉雅晴さんは笑います。

気になるお弁当の中身は、国産の豚ロースを特製たれで焼き上げたものをご飯にのせたシンプルな構成。副菜にじゃがいもの素揚げ、しば漬け、きんぴら(特製弁当のみ)。そして愛される味の決め手が、先代から壺ごと受け継ぎ40年以上同じ製法で作られている、肉のうまみが隠し味の「秘伝のたれ」です。「うなぎのたれと同様に継ぎ足し方式。焼いた肉をたれにくぐらせる際に肉汁が落ちることで、味わいが熟成されていくんですよ」と泉さん。まろやかな甘みが特徴で、たれが染み込んだごはんも格別です。一口頬張れば、「これこれ、この味!」と誰もが笑顔になる理由にもうなずけます。
また、米問屋として長年培ったノウハウを生かし、全国の米処から弁当に最適なお米を厳選。季節で変わるお米自身の水分量を見ながら、そのときに一番合うものを目利きする。プロが見立てたお米がまた、バー弁のおいしさを支えています。

教えて! 社長の「ちょっとおいしい話」
元来は「駅弁」。そのままでもおいしいことが前提ではありますが、好みで温め直して食べる人も。そこは好き好きに楽しんでと話す傍ら、「実は出来たてよりも、少し時間がたったくらいの方がごはんとの一体感が出ておいしい」という社長ならではの気付きもあったとか。味なじみの良いタイミングで開店するよう、逆算して調理を開始していますが、売り切れた場合は追加で作ることも。もし熱々を購入したら、10分くらい置いてから食べる方が、いつもの味に落ち着くそうです。

取材協力の文京店に入ると、正面のレジ奥にライブ感のあるキッチンが広がります。カウンターにはバー弁をはじめ、チャーシュー丼やあさり飯、日替わり弁当など、どれを食べようか目移りしてしまう品ぞろえ。「大切にしていることは『愛情を持って作ること』。例えば、あく取りは3回で足りるところを4回行う、しっかり味見をするなど、細部にわたる丁寧な仕事を積み重ねています」


「変えないこと」の難しさ、そしてバー弁への思い
「時代の変化に合わせた工夫は?」の問いに対し、「変えないようにすること(『いつも通りおいしいね』に応え続けること)の方が難しいです」と話してくれた泉さん。豚肉一つとっても、飼育環境の変化により脂の甘みが異なるなどといった現実にも向き合い続けています。常連のお客さんほど味の変化に敏感だとか。「時代と共にお客さまの味覚も変化する中で、愛され続ける味を守ることが最大の使命です」と続けます。
バー弁は、2018(平成30)年「秘密のケンミンSHOW」(読売テレビ・日本テレビ系)への出演が転機となり、知名度が爆発的に上昇。放映後は関東各地のナンバーを付けた車が駐車場を埋め尽くすほどの反響を呼びました。千葉県民には誇りと愛着を持って語られる存在となっている現在、泉社長に今後への思いを伺いました。
「米事業が『攻め』なら弁当事業は『守り』。私たちは米作りを手掛け、流通させることで『川上から川下まで』米の一貫管理体制を構築しています。お弁当はその最終出口。預かっているもの、受け継いだものをこれからも守り続け、地域の食文化を支える存在であり続けたいですね」。

吟米亭浜屋(販売店舗)
(文京店)
住所/千葉県木更津市文京6-11-17
営業時間/10時~19時
(朝日店)
住所/千葉県木更津市朝日3-8-3
営業時間/10時~18時
ホームページ/https://5han.co.jp/index.html
【運営】株式会社泉屋
住所/千葉県木更津市貝渕3-6-5
今年で発売60年、節目にリニューアルも!マンヨーケン(万葉軒)の「菜の花弁当」

1966(昭和41)年誕生の、千葉駅を代表する駅弁「菜の花弁当」。黄色いいり卵、茶色の鶏そぼろ、その他の副菜で鮮やかに「菜の花畑」をイメージしたロングセラーの愛され弁当です。
(2026年3月27日取材)
国鉄千葉駅で弁当販売をスタートした万葉軒
1928(昭和3)年当時、国鉄千葉駅は千葉市中央区要町(現在の千葉市民会館)付近だったことから、株式会社万葉軒は千葉駅の近くの要町で開業しました。その後、国鉄より構内立売営業の承認を受け、駅弁の製造・販売を開始しました。社名の由来は「千葉」にちなんで千より大きな万で万葉、あるいは「万葉集」にも由来するといわれています。
いり卵の開発に半年も。瞬く間に人気に
万葉軒の駅弁の中でも根強い人気を誇る「菜の花弁当」の誕生は、当時「千葉の名物駅弁を作りたい」という思いが出発点。千葉を象徴する菜の花の鮮やかな黄色をお弁当で表現しようと開発がスタートしましたが、いり卵の開発だけで約半年を要したそうです。試行錯誤の末、着色料・添加物を使わず、卵本来の色味を生かしたさらっとしたいり卵を実現。卵に引けを取らない鶏そぼろは、独自のたれでしっかりと甘辛く仕上げました。
そうして完成した菜の花弁当は初め、経木(きょうぎ)(※)の箱に入れて販売していましたが、その後、器を赤いお重に変更したところ、女性・子どもにも受けが良く、瞬く間にヒット商品に。菜の花と蝶々がモチーフの掛け紙のデザインも、発売当初から60年間変わらずお弁当の存在を引き立てています。
(※)木材を紙のように薄く削った、日本伝統の天然包装材


60年目の満を持したリニューアル
菜の花弁当は、甘さとしょっぱさの絶妙なバランスが大きな魅力。そして「もう少し食べたい」と思わせる、食べ飽きさせないボリューム感にまとめられています。真ん中にのるあさりの佃煮には、千葉の海の幸を象徴しつつ程よい箸休めの役割が。リピーターやまとめ買いをする常連客も多いと言います。
また、今年の1月には発売60年目にして初のリニューアルが行われました。鶏そぼろは粒を大きくして肉感をアップ、あさりの佃煮は串を外して食べやすく。漬物は奈良漬けのみにして、菜の花のお浸しを追加。「ずっと変わらなかったものを変えることは、とても勇気のいることでした。
昔からのファンの方にも、新しい菜の花弁当を愛していただけたらうれしいです」と話すのは、長年お弁当の製造から販売などに携わる株式会社リエイライフの若林さん(2013年に株式会社リエイが株式会社万葉軒を吸収合併。現在は同社のフードサービスの駅弁・弁当事業ブランドとして老舗の味を引き継いでいます)。

店頭に立っていると60年来の常連客に出会うことも。「自分が生まれる前から買ってくれているお客さまがいると実感する瞬間も、仕事の大きな励みになります」と続けます。現在の上皇陛下が千葉にご来訪された際、菜の花弁当を召し上がったというエピソードも社内に残っているのだとか。
販売場所は現在、JR千葉駅構内(ペリエ千葉エキナカ店)のみ。午前中であれば確実に購入可能ですが、午後になると売り切れてしまうこともあるため、早めの来店がおすすめ。外部で催事販売を行うこともあり、3月の3連休では某ショッピングセンターで約2,000食を完売したという、安定の人気ぶりです。
並ぶ看板商品「トンかつ弁当」の異なる魅力
さて、ここまで来ると触れておきたい、万葉軒のもう一つの看板商品「トンかつ弁当」は、1955(昭和30)年発売のロングセラー。ソースに浸した薄めの豚ロースカツがファンの心をつかみ続け、不動の一番人気なのだとか。食感が絶妙なカツは、これ以上厚くても薄くてもダメなのだと、熱心なファンは話します。

掛け紙は、クリスマスやバレンタインなどの季節やイベントに合わせてデザインを変更しているのをご存じでしょうか。この楽しい遊び心が駅弁マニアの心をつかむことはもちろん、店頭では常連客との会話のきっかけも生んでいるのだそうです。リアルで憎めない表情の豚のキャラクターについては、「いつだれが描いたのか私にも分かりません。よく見るとちゃっかり5本指なんで、もしかしたら半分人間なのかも(笑)」と若林さん。



「時代に合わせて変えるべきところと、ずっと変えてはいけないところがあると思います。これからも私たちは、創業者がお弁当に込めた思いやこれまでの伝統を大切にしていきます」
※愛されキャラクターであるトンかつ弁当の「ぶたさん」が新たな遊び心を吹き込まれ、見た目もかわいいキャンディーとなって店頭に仲間入り。お弁当を食べた後のおやつや楽しい話題作りにいかが。


マンヨーケン(万葉軒)(販売店舗)
(ペリエ千葉エキナカ店)
アクセス/JR千葉駅構内 エキナカ3階
営業日/(月~金)7時~21時、(土日祝)7時~20時
ホームページ/https://riei-manyoken.jp/
【運営】株式会社リエイライフ
ホームページ/https://www.riei.co.jp/