そばの麺は本来、手で打って細く切るものだと知ったのは小学生の頃。「あんなに細いものを人の手で均等にカットできるのか」と驚いた記憶があります。どこか「熟練の職人さんの作業」という遠いイメージだったそば打ちを、一般向けに、市内で教えてくれる人がいました。

公開 2026/05/30(最終更新 2026/05/26)

野中真規子

野中真規子

人・土地・物語をつなぐ 文化プロデューサー/編集者 イベントやメディアなどのプロデュース、ディレクション、制作を行い、これまで1,500人以上の「豊かで楽しく生きる人」に取材。自己探究の過程で見えてきた、暮らしや意識が変わる瞬間について発信中。https://www.instagram.com/teganumakki/

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北海道の実家で母の打ってくれた「柏だし入りのそば」が美味しくて

我孫子市日秀にある「将門そば道場」を運営する星崎輝夫さんは、北海道の出身です。

育てて打って、食べるまで。そばの一生を楽しむ機会を 星崎輝夫さん
星崎輝夫tさん(将門そば道場で)

「実家は農家でしたから、自給自足が基本。秋にはそばの種もまいて収穫して、挽いたそば粉をおふくろが自分で打って、食べさせてくれました。家には馬や牛や豚や羊もいました。ひよこを買ってきて鶏にして卵を産ませるんだけど、3、4年経つと卵を産まなくなる。それを肉にして『かしわだし』を作って食べたそばが、とても美味しかったんです」

就職で東京に来ても、そばを食べ歩くのが好きだったという星崎さん。

その後、結婚して我孫子に家を建て、市内在住50年近くになります。

定年退職後、そば打ち教室に通ったのをきっかけにこの道へ

そば打ちに出会ったのは、定年退職後のことでした。

市の広報でそば打ち教室の生徒募集を見つけ、半年ほど習った後、月1回、柏で江戸そばの歴史や知識を学ぶ会にも参加。

麺類の食文化を生かした地域振興を広める『全麺協』の認定会でそば打ちの初段に合格します。

「試験では自分でそば粉をこねて、のばして製麺するまでを審査されます。段位が上がるごとにそば粉の量が増えたり、粒の粗さが増していき、難易度が上がるんです」

三段位以上になると、全麺協に所属する団体に入る必要があり、我孫子市布佐のそば会に月1回通うようになりました。

「布佐の近隣センターの調理室を借りていたのですが、会員がどんどん増えて台が足りなくなり、私がアビスタの調理室を借りて月1回、市内西側の生徒さんを教えるようになりました。それでも道具を運搬する手間がかかり、会場の予約も取りにくくなってきた。自由に使える場所を求めて、精肉処理工場が立ち退いて空き家になっていた、日秀のビルを借りて独立することにしたんです」

星崎さんが電気、水道などのインフラを引き直して、道具も知り合いに頼んで集め、6人が同時に打てる設備をととのえました。

名前はビルのそばにある将門神社からもらって「将門そば道場」とつけました。

育てて打って、食べるまで。そばの一生を楽しむ機会を 星崎輝夫さん
将門そば道場の仲間たち。中央帽子姿が星崎さん

月に2回の定例そば打ち・食事会や、休耕地を活用したそばの栽培も

将門そば道場では、会員向けに月2回、第1・第3の水曜日に定例そば打ち会を開催。

指導するのは江戸流のそば打ちです。

丸く伸ばして製麺する地方のそばと比べて、江戸のそば打ちは狭い場所で行い、無駄をなくすために長四角に伸ばしてから切るのが基本。

育てて打って、食べるまで。そばの一生を楽しむ機会を 星崎輝夫さん
長さ21cm、太さ1.3mmを目安にカットしていきます

「そばは喉越しが命。同じ太さの麺ができれば均一に茹でられて、喉越しがスッと良くなります。定例会のあとはゆでたそばをみんなで食べます。味噌、パン、燻製作りが得意な人もいて、持ち寄った料理も合わせてのにぎやかな食事会になることもあります」

また将門そば道場では、休耕地を活用してそばの栽培もしています。

「そばの種類によって、『夏そば』『中間そば』『秋そば』などざっと3種類の育て方があります。本州は秋そばがメインで 、8月のお盆を過ぎたあたりに播種して、秋に霜が出る前に刈り取りします。そばは約75日で収穫できるんですよ。だから昔は米が取れなくなると、すぐにそばを植えて食料を確保していたんです」

育てて打って、食べるまで。そばの一生を楽しむ機会を 星崎輝夫さん
脱穀の様子

刈り取ったそばは天日干しし、水分計で15%になったら専門業者に製粉してもらいます。

乾燥機にかけず天日干しすることで、その期間に葉や茎から養分が実に行き届き、おいしいそばになるそうです。

育てるのは千葉在来の種を元としたオリジナルの「将門そば」。

のどごしと甘みが特徴です。

現在、星崎さんは、日本で数人しかいないそば打ち六段位に。

将門そば道場には会員や、ほかの団体に入りながら参加している準会員も合わせて40人ほどが在籍しています。

育てて打って、食べるまで。そばの一生を楽しむ機会を 星崎輝夫さん
仲間と打ったそばを、仲間と一緒にその場で食べるのが楽しみの一つ

「そば打ちを20年近く続けていられるのは、そばが好きという思いもありますが、やっぱり仲間がいるから。夏休みには親子や、地域の支援学校の生徒さん向けにそば打ち体験を実施したり、老人施設やイベントでそばのふるまいもしています。今後も仲間を増やしながら、地域を盛り上げていきたいですね。栽培から体験して、採れたそば粉でそば打ちをしたり、あるいはそばを受け取れる『そば栽培プロジェクト』も計画しています。自分で育てて打ったそばは本当においしいので、ぜひ体験してほしいです」

将門そば道場
住所/千葉県我孫子市日秀112
電話番号/090-5197-4847