「ちょっぴり高めの価格設定ですが、『一度食べるとこの食感にハマる!』と言っていただける自信作です」と話すのは、多古米米粉を使った天然酵母スコーンのお店「trois(トロワ)」の谷山美紀さん。ころんとかわいらしいサイコロ形は、さくっとお口でほどけ、かむほどに米粉の優しい甘さがじわーっと広がります。

「凍らせて食べると、ザクザク感が増すんですよ」と言われ、冷凍庫から取り出して数分後にがぶり。おっとっと、手からほろほろこぼれそう。しっかりした歯応えがおいしい! また、予熱したトースターで2分ほど温めると、今度はしっとり芳醇(ほうじゅん)な塩こうじの香りがふんわり漂います。

公開 2026/08/31(最終更新 2026/08/31)

まりか

まりか

ネコと旅、お酒を愛する50代。特技は迷子になることなのに、よく道を聞かれます。両親、伯父夫婦の介護に翻弄されつつ、かわいい、おいしい、のんびりを求めてさまよう日々をinstagramに綴っています。本業は社会福祉士。★Instagram★@neko_marika

記事一覧へ

「おいしい」の先に笑顔が広がる材料選び

trois 多古米米粉を使った、さくさくほろりとほどける天然酵母スコーン
多古米米粉を使った、さくさくほろりとほどける天然酵母スコーン

「trois」のスコーンは、厳選したこだわりの材料を使用。

多古米の頂点を決める「多古米グランプリ」で2023年総合グランプリに輝いた「たちばなふぁーむ」の特別栽培多古米は、栽培期間中の農薬の使用回数や、化学肥料の窒素成分量が地域の慣行レベルの50%以下で、環境負荷が小さいもの。

その多古米米粉の他にも国産スペルト小麦、きび糖、自家製塩こうじ、天然酵母などを生地に使い、ナッツやチョコレートはフェアトレードのものなどを選んでいます。

「最初は一つ100円くらいで販売したいと思ったのですが、大学の授業で農薬やチョコレートの生産背景について学んだことを思い出し、高価でもこだわったものを使おうと考えるようになりました」と谷山さん。

谷山さんが目指すのは、「“おいしい”の先にも笑顔の輪が広がるものづくり」。

食べる人はもちろん、作物を育てる人や環境にも優しく、循環する世界です。

「そうでなければ私がやる意味がない、と思いました」。

少し値が張っても、思いに共感してもらえる人に食べてほしいと語ります。

子育ての中で見つけた「私だからこそ」の仕事

trois 天然酵母スコーンのお店「trois(トロワ)」の谷山美紀さん
天然酵母スコーンのお店「trois(トロワ)」の谷山美紀さん

手話通訳に憧れて福祉系大学に進み、社会福祉士として働いていた谷山さん。

縁あって多古町に引っ越し、知り合いもいない孤独な子育ての中で、自分が本当にやりたいことは何だろう、と考えたそうです。

そんなもんもんとした育休中に出合ったのが、天然酵母のスコーン。

あまりのおいしさに、作っている先生のパン教室に子どもをおんぶして通うほど夢中になりました。

ある日、自分で焼き上げたスコーンを、通っていた子育てサロンに持っていったら、「おいしい! 売ってみたら?」と言われ、「これだ!と思いました。育休中に退職してスコーンの研究に没頭。試作、試食の毎日で、気が付いたら体重が増えちゃいました(笑)」。

trois マルシェでは谷山さんとの会話を楽しみながら、好みの味を選べます
マルシェでは谷山さんとの会話を楽しみながら、好みの味を選べます

こうして2年を経た2024年4月、地元のフェスに恐る恐る出店すると、何と30個が2時間で売り切れるほどの人気ぶり。

自信を持った谷山さんは現在、町内外のマルシェ出店と委託を中心に販売中。

多古町にあるシェアカフェ「KITCHENわたことり」にて、月に1回(不定期)、スコーンとスープのカフェを営業しています。

定番もお楽しみも、届くたびうれしい

trois チョコとコーヒー(左)、カレーとカシューナッツ
チョコとコーヒー(左)、カレーとカシューナッツ

レシピは約20種類。

プレーンや紅茶などの定番に加え、緑茶とあんこ、クランベリーとアーモンドなど、こだわりの組み合わせも。

マルシェで人気なのは「チョコとコーヒー」。

カフェオレ生地にスイートチョコを合わせ、苦みのない優しい甘さに仕上げています。

他にも、地元のカレー屋さんでブレンドしてもらったスパイスを使った「カレーとカシューナッツ」がリピーターの多い一品なのだとか。

trois きな粉とイチジク(左)、酒かすアップルシナモン
きな粉とイチジク(左)、酒かすアップルシナモン

谷山さんのお気に入りは、「trois」の商品を委託販売している 「Reeha」のドライイチジクを合わせた「きな粉とイチジク」。

きな粉の香ばしさの中に、イチジクのジューシーな甘みが広がります。

一方、「酒かすアップルシナモン」は、ドライアップルの風味をどう引き出すか試行錯誤を重ねて生まれた一品。

酒かすに漬け込むことで、リンゴのおいしさがぐっと引き立ちました。

ちいきの逸品での販売セットは、プレーン2袋にランダム3種または6種を組み合わせたもの。

今日はどんな味に出合えるだろう——そんな楽しみ事を、「trois」のスコーンは届けてくれます。

フランス語で数字の3を意味する「trois」というお店の名前には、自宅=第1の居場所、学校や会社など役割のある場所=第2の居場所に続く、「自分らしく人生が豊かになる場所」=第3の居場所でありたいという思いが込められています。

スコーン作りを通して自分の道や仲間を見つけた谷山さん。

もっともっと幸せの輪が広がりますように。