「いつもと違う環境で、いつもと違う非常食。しっかりかんで食べられる『お口づくり』できていますか?」。歯科医師が提唱する「お口の防災」とは。
教えてくれたのは…

| さかえ歯科クリニック 院長 山本信一さん |
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| 1990年、松戸市で開業。 インプラント治療歴34年 |
公開 2026/09/02(最終更新 2026/09/01)
目次
今からできる3つの「お口の備え」
地震や台風などの災害に備えて、水や食料、懐中電灯などを準備している人は多いと思います。しかし、意外と忘れられがちなのが「お口の備え」です。災害時の「お口まわりのトラブル」には、主に次の3つがあります。
【1】歯磨きができない
非常用持ち出し袋に、歯ブラシや歯磨き剤は入っていますか?
避難生活で歯ブラシや歯磨き剤が手元にないために歯を磨けない、また断水が続いて水を節約しなければならない場合、歯磨きそのものを控えてしまいがちになります。
しかし、口の中が不衛生な状態が続くと、むし歯や歯周病が進行するだけでなく、口臭が気になって人と話すのを避けてふさぎ込んでしまうと精神面の健康も損なう恐れも。
また、風邪やインフルエンザを発症しやすくなり、高齢の方は、口の中の細菌が唾液などと一緒に気管に入り込んだ場合に誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうと、命に関わることもあります。
非常用持ち出し袋には、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどの口腔ケア用品も入れておきましょう。
【2】水がない(少ない)
災害時には飲み水が優先されるため、歯磨きに十分な水を使えない場合がありますが、歯ブラシがあれば少量の水でもブラッシングは可能です。
歯ブラシがない場合には、清潔なガーゼやティッシュを指に巻き付けて、歯や歯茎の汚れをやさしく拭き取るだけでも役立ちます。
また、唾液には口の中をきれいに保つ自浄作用があります。
よくかむ(ガムなどをかんでもOK)、舌を動かす、唾液腺をやさしくマッサージすることも、お口の乾燥対策になります。
【3】非常食が固くてかめない
実は、歯科医師として特にお伝えしたいのが、この3つ目のトラブルです。
災害時には、普段食べ慣れていない保存食や非常食を食べることがあります。
ところが「奥歯がない」「入れ歯が合っていない」「歯がぐらぐらしている」「歯に痛みがあって片側でしかかめない」といった状態では、食べられるものがさらに限られてしまいます。
非常時だからこそ、自分の歯や自分に合った入れ歯、インプラントなどで「しっかりかめる状態」でいることが重要になります。
そのためには、日頃からその状態を維持しておくことが大切です。
防災は「かめるお口づくり」から
防災というと、水や非常食を何日分用意するかに意識が向きがちですが、せっかく食料があっても十分にかめなければ意味がありません。
特に奥歯を失ったまま長期間放置している人や、入れ歯が合わず十分にかめていない人は、歯科医院で一度お口の状態を確認しておくことをお勧めします。
失った歯を補う方法には、入れ歯、ブリッジ、インプラントなどがあります。
それぞれに特徴があり、年齢やお口の状態、全身の健康状態、予算や希望などによって適した治療方法が異なります。
災害はいつ起こるか分かりません。この機会に、非常用持ち出し袋の中身と一緒に、「自分は今、しっかりかめているだろうか」とお口の健康についても確認をしてみては。
そして気になる症状がある人は、早めにかかりつけの歯科医院に相談をしてください。
義歯治療のメリットとデメリット
【入れ歯】のメリット
・取り外しができるので洗浄しやすい
・保険適用(3割負担)の場合1万円~1万5000円前後で作れる
【入れ歯】のデメリット
・固定力が弱いため、装着時の違和感や使用中に外れることも
・クラスプ(金属製のバネ)が目立つ
・しっかりかむことができない
【ブリッジ】のメリット
・固定力が高く、装着時の違和感が少ない
・取り外す手間がない
【ブリッジ】のデメリット
・失った歯の両隣の健康な歯を削る必要がある
・義歯を支える両隣の歯に負荷がかかり、歯の寿命が縮まる
・固定式なのでケアが難しい
【インプラント】のメリット
・しっかりかめる
・自然な仕上がり
・違和感が少ない
・周囲の歯に影響を与えにくい
・長持ちしやすい
【インプラント】のメリット
・保険適用外のため治療費が高額になる
・治療期間が長い
・継続的なメンテナンスが必要
・あごの骨の状態や全身疾患などの影響で受けられない場合もある