慢性腎臓病が怖いのは、心臓病のリスクも高めること。自覚症状が少ない「沈黙の臓器」だからこそ、早期発見で治療につなげることが大切です。
※この記事は船橋市立医療センター公開医療講座「一緒に学ぼう腎臓病教室~腎臓病って何なの?」(講師/同センター腎臓内科清水英樹氏)を参考に作成しました。
公開 2026/08/16(最終更新 2026/08/05)
腎臓の位置と働き
腎臓はそら豆のような形をした長さ約10cmの臓器。内部には片方だけで約100万個のネフロンがあり、その先端にある糸球体が血液をろ過します。1日にドラム缶約1本分(約150~180L)の原尿をつくり、その約99%を体内へ戻し、約1~2Lを尿として排出しています。

腎臓は体の状態を映す「全身の鏡」
腎臓は全身の健康を支える重要な臓器です。血液中の老廃物や余分な水分・塩分を尿として排出するだけでなく、血圧を調整する、赤血球をつくる、骨を丈夫に保つビタミンDの働きを助けるなど、その働きは多岐にわたります。
一方、脱水や高血圧、糖尿病など体の異変の影響を受けやすいことから、「全身の鏡」ともいわれています。慢性腎臓病は、腎臓の働きが少しずつ低下していく病気。国内では約5人に1人が該当すると推計されます。問題は、腎臓だけの病気にとどまらず、心臓への影響も大きいこと。

腎臓も心臓も血管の状態が大きく影響する臓器なので、高血圧や糖尿病などによって同時に傷みやすく、互いに影響し合う関係にあります。
腎機能が落ちると体内に余分な水分がたまって心臓への負担が増え、逆に心臓の働きが低下すると腎臓へ送られる血液が減り、腎臓に負担がかかる…という悪循環に。そのため、慢性腎臓病では心筋梗塞や心不全などの心血管疾患を発症しやすくなることが分かっています。だからこそ腎臓の異常は早めに見つけ、放置しないことが大切なのです。

タンパク尿は体からの危険信号
健康診断で見逃したくないのが「タンパク尿」。腎臓には「糸球体」と呼ばれる小さなフィルターがあります。健康な糸球体は、血液をろ過して老廃物や水分を排出しますが、赤血球やタンパク質など体に必要なものは通しません。
しかし、糸球体が傷むとフィルターの働きが弱まり、本来は漏れないタンパク質が尿へ漏れ出します。これがタンパク尿で、腎臓に負担がかかっていることを知らせる重要なサイン。糸球体は加齢とともに少しずつ減っていきますが、残った糸球体が働きを補うため、しばらくは機能が保たれます。
しかし慢性腎臓病では糸球体の負担が大きく、機能の低下が急速に進むことがあります。
現在は、慢性腎臓病の進行を遅らせる治療薬の選択肢も増え、血圧や血糖の管理、減塩などを組み合わせることで、腎臓への負担を軽減できるようになってきました。治療では腎臓を休ませるなどして、長く機能を保つことを目指します。
治療効果を十分に生かすには、毎日の生活習慣を見直すことが欠かせません。健診で異常を指摘されたときは、「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、医療機関で詳しい検査を受けましょう。早めに気付き、適切な治療や生活改善につなげることが、腎臓を長く守ることにつながります。