終の棲家として選ぶことも多い特養。最近ではITを活用することで、より安心で快適な暮らしを支え、入居者とスタッフが一緒に楽しむ施設もあるようです。そんな風に変わりつつある特養の在り方を取材しました。

教えてくれたのは…

社会福祉法人皐仁会特別養護老人ホーム
けやきの里あやめ館 施設長 砂山博幸さん
けやきの里 施設長 井上稔さん

公開 2026/11/04(最終更新 2026/10/23)

編集部 ゆりか

編集部 ゆりか

編集部所属の取材記者。白井市出身、船橋市在住。コンテンポラリーダンス、ヨガ、ズンバ、バレエなどとにかく踊るのが好き。取材執筆も好きだが、地図が読めないため取材前はいつも軽く迷う。食べ盛りの夫と3人の子育てに奮闘中。

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眠りスキャンで夜の定期巡回が減る

特別養護老人ホーム(特養)は、主に要介護3以上の認定を受けた高齢者が、日常のサポートを受けながら生活を送る公的施設。入居者の状態によって食事や排せつの介助を行い、日中は体操や生活リハビリ、レクリエーション、季節の行事などを実施しています。

最近ではITテクノロジーを取り入れ、入居者がより安心で快適に過ごせる環境を整えている施設も登場。こうした取り組みは入居者だけでなく、働くスタッフの負担軽減にもつながっています。

例えば特養では夜の定期巡回が欠かせませんが、ベッド型見守りセンサー「眠りスキャン」を導入すれば、睡眠、覚醒、起き上がり、離床をリアルタイムで把握できます。心拍数や呼吸数のアラート設定も一人一人に合わせて調整できるので、必要なときだけ訪室することが可能。スタッフはモニターで入居者の様子を随時確認できます。

これによって、部屋を訪れるたびに利用者を起こしてしまう、という心配も少なくなりました。またお風呂にもさまざまな工夫があります。寝たきりの人が寝たまま入浴できる設備もあり、ミスト浴で体を温めながら無理なく清潔を保てます。

立ち上がる必要がないので、転倒のリスクを心配せずに入浴できるようになりました。おむつに排せつを検知するセンサーを取り入れている施設もあります。おむつに付けるだけで、交換のタイミングを把握したり、トイレへの誘導など自立支援に役立てたり。入居者にとっても、スタッフにとっても、より安心安全な介護が実践できるよう、最新設備が取り入れられているのです。

夜間の見守りイメージ

■従来の施設

巡回

↓

部屋に入る

↓

覚醒や呼吸の確認

※場合によっては起こしてしまう

■眠りスキャンを導入している施設

モニターで確認

↓

「起き上がった」などを把握

↓

必要なときに訪室

※その時々に応じたケアができる

ITが支え、人が寄り添う 変わりゆく特別養護老人ホーム
ベッドの下に敷く眠りスキャン本体
ITが支え、人が寄り添う 変わりゆく特別養護老人ホーム
モニターで入居者の状態を確認できる

変わらない人の役割の大事さ

テクノロジーの力で介護の負担を減らせても、入居者の心に寄り添うのは、やはり人の役割です。特養では要介護度が高い人や認知症が進行している人と日々深く関わります。単に食事や排せつの介助をするだけではなく、「今日は食べたくない」という人にも寄り添う必要があります。

「どうしたら食べてもらえるだろう」と考え、声かけやタイミングを変えてみる。うまくいった方法があればスタッフ同士で「こんな声かけをしたら食べてくれたよ」と共有する――そんな試行錯誤の繰り返しが安心感や信頼関係の構築につながり、心の通った人間同士の触れ合いにつながっていきます。

ITが支え、人が寄り添う 変わりゆく特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム「けやきの里」のイベント時はスタッフも仮装
ITが支え、人が寄り添う 変わりゆく特別養護老人ホーム
スパイダーマンに扮(ふん)したことも

完璧を求め過ぎず、入居者と一緒にスタッフも楽しむことが重要かもしれません。「変わるもの」と「変わらないもの」。機械が見守り、設備が支えてくれても、最後にそばにいるのは人。マニュアルだけでは語れないスタッフの日々の工夫が安心して暮らせる場所をつくっているのでしょう。