異常気象の研究で今年の「猿橋賞」を受賞。気候の未来を見据え、科学的で確かな研究と情報発信で活躍中の今田由紀子さんを、東京大学柏の葉キャンパスに訪ね、話を聞きました。

今田 由紀子
長崎県出身。2010年東京大学を経て同大学院博士課程修了。気象庁気象研究所主任研究官などを経て、2023年4月より現職。世界気候研究計画(WCRP)の各種委員を歴任。日本気象学会正野賞、地球惑星科学振興西田賞、猿橋賞を受賞。著書『異常気象の科学―猛暑・豪雨・大雪のしくみと将来予測』(講談社)。

公開 2026/11/02(最終更新 2026/10/30)

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東京生まれ。月の出ている日は必ず見つけて写真に撮りブログにアップする月大好き人間です。果物を食べながら、「この果物はどうやって生まれてきたのかな?」とすぐ考えるタイプ。ちなみにプロフィール写真は、以前記事作成のために撮影した栗の赤ちゃんです。

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地球温暖化の原因は人間活動の結果

地球温暖化は、世界の科学者が結集し、2021年の第6回IPCC(※)報告書で「人間の影響が地球を温暖化させてきたことに疑う余地はない」と断言し、「地球温暖化は人間活動の結果」が定着。

その後の温室効果ガス削減や気候変動対策を後押ししました。

その科学的根拠を支えたのが「イベント・アトリビューション(EA)」。

ある異常現象の発生に人間活動が与えた影響を、大量のシミュレーションで数値化できる手法です。

今田さんはこの手法を用いて、スーパーコンピューターや気象庁の高解像度の気象モデルなどを駆使して、日本の複雑で難しい気候分析に挑戦。

ついに、2018年7月の西日本豪雨が、「産業革命前」なら発生確率が0.15%、「起きた時点の条件」なら0.48%と、約3倍も起こりやすい状況だったことを解明(図1)。

東京大学准教授・今田由紀子さん(48) (図1)2018年7月豪雨(西日本豪雨)のイベント・アトリビュー ション
(図1)2018年7月豪雨(西日本豪雨)のイベント・アトリビューション

さらに、直後の1カ月間で1000人以上の熱中症死亡者を出した猛暑では、「産業革命前なら発生確率0%」、起こりえなかった猛暑だったことも解明。

今回の受賞となりました。

1898年~2026年夏(6~8月)の日本の平均気温偏差

(出典)気象庁ホームページ:https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_jpn.html

※気候変動に関する政府間パネル(国際機関)

地球温暖化による異常気象に備える

「温暖化が猛暑や大雨の『発生確率』を上昇させるだけでなく、雨量や台風の強度や被災面積の増加など、異常気象の『量』にも影響を及ぼすことが分かった」と今田さん。

昨年は、進む温暖化に対応すべく日本の仲間と「極端気象アトリビューションセンター」を結成。

今年7月後半の猛暑の分析を約1週間後に出すなど、迅速な情報発信も始めています。

「今年相次いだ豪雨被害も例外ではないかもしれません。地球温暖化を肌で感じてきた今、どうしていくか一人一人考えてみませんか」

東京大学准教授・今田由紀子さん(48)
東京大学准教授・今田由紀子さん(48)

猿橋賞とは…
多様な自然科学の分野で優れた研究業績を収めた、50歳未満の日本の女性科学者を表彰する権威ある学術賞で、地球化学者の猿橋勝子博士が設立。今田さんは2026年第46回の授賞者です